遺骨返還「被害者の目線で語る」 学術活動が人種差別や植民地主義を助長した歴史再考 那覇で国際シンポジウム 沖縄


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 戦前の研究者が沖縄などから持ち出した遺骨の返還などを求める「ニライ・カナイぬ会」などが9日、県立博物館・美術館講堂で国際シンポジウム「まじゅん、語やびら!!」を開催した。同会共同代表と国内大学教授らに加え、先住民の遺骨などの返還を求めてきたハワイの運動家やアメリカ本国の研究者が登壇し、世界の遺骨返還問題と脱植民地化をテーマに議論を交わした。

遺骨返還問題について会場からの質問に答える登壇者ら=9日午後、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館講堂

 登壇者は形質人類学などの学術活動が人種差別や植民地主義を歴史的に助長してきたという視点を繰り返し強調した。

 約30年間、ハワイ先住民の遺骨や副葬品などの返還運動に携わってきた、エドワード・ハレアロハ・アヤウさんは「同意なく骨を取ることは窃盗と同じ。不正義については必ず被害者の目線に立って語らなければならない」と当事者性の尊重を求めた。

 カリフォルニア大学で生物考古学を研究する、サブリナ・アガルワルさんは「20世紀の大学では病理学の授業のために先住民の遺骨が管理された。分類すれば学術研究はしやすくなるが、人間をモノにしてしまう」と科学と支配権力の歴史的な結びつきを批判した。

 シンポジウム終盤には来場者から複数の声が寄せられた。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんは、2019年に台湾大学から県教育委員会に移管された遺骨について「元あった墓に返すのではなく、博物館に入れられるのではないか」との懸念を示した。これに対し、登壇者でコロラド大のチップ・コルウェル准教授は「政府や博物館がさまざまなコミュニティーの合意を得ることが重要」と応えた。
 (西田悠)