【深掘り】維新、沖縄での党勢拡大を加速 衆院全選挙区への擁立が焦点に 自民対オール沖縄の顔ぶれに風穴開けるか


この記事を書いた人 琉球新報社
日本維新の会県総支部大会で集まった支持者らを前に衆院選に向けて発破を掛ける同会選対副部長の石井章参院議員=5月28日午後、那覇市内

 日本維新の会が4月の全国統一地方選での躍進を背景に、沖縄県内でも党勢拡大の動きを加速させている。次期衆院選を巡って5月には沖縄4区から公認候補として同会県総支部幹事長の山川泰博氏(53)の擁立を決定。12日には沖縄2区支部長に県議会議長の赤嶺昇氏(56)の選任を発表した。

 現職議長を「一本釣り」

 12日午後、国会内で開いた会見で、維新の藤田文武幹事長は赤嶺氏から公募に申し込みがあったとし、党幹部らで複数回、面談を重ねて選任したと経緯を説明した。衆院選の公認について「支部長の選任イコール公認ではない」としつつも、「沖縄は苦戦が続いてきた地域。実力のある即戦力の方が仲間になるのは非常に心強い」と現職議長の一本釣りに満足そうな表情を浮かべた。

 次期衆院選では「全選挙区擁立が目標」と強調し、県内の残る1、3区についても公認候補擁立を進める考えを示した。

 維新は2013年に初めて県総支部を設置した。14年の衆院選に元郵政民営化担当相の下地幹郎氏を擁立。同氏は比例で復活当選した。15年には同氏らが立ち上げた地域政党「そうぞう」所属の県議らが維新に合流。国会議員を含め所属議員が19人に上るなど同氏を筆頭に勢力を伸ばした。

 だが、2020年1月に日本でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業の汚職事件を巡って維新が下地氏を除名処分とすると、同氏を中心に集まった県議らが離党し、同年3月に総支部は解散した。

 前回衆院選で落選も得票に手応え

 維新が再び存在感を示したのは2021年の衆院選だ。沖縄2区で山川氏を公認候補として擁立。落選したものの1万5千票余を得た。県総支部幹部は「地盤のない2区で、公示直前の出馬表明でこれだけ取れた」と強調する。「確かな手応え」(同幹部)を背景に、22年3月に県総支部を再設置した。

 統一地方選での躍進から約1カ月。今年5月28日に開催された県総支部大会には、党副選対本部長の石井章参院議員ら国家議員も駆け付けた。石井氏は次期衆院選を念頭に「九州沖縄ブロックで4議席はとれる」と自信をのぞかせ「沖縄で最低1人は当選できるように」と発破を掛けた。

 国政与党の自民関係者は全国的な維新の躍進が県内に波及するかについて「限定的ではないか」と分析する。「県内で維新は下地氏が看板だった。看板が外れて一度、火が消えた。全国での熱気を持ち込めるか疑問だ」と語った。

 「オール沖縄」関係者は維新の動きについて「反自民の受け皿となり得る。保守票の取り合いになってくれたら」と期待を寄せる。一方で、自民と「オール沖縄」が次期衆院選で擁立予定の候補者の顔ぶれは「変わらないだろう」として、閉塞感から無党派層が維新に流れ「票を伸ばす可能性はある」と警戒感ものぞかせた

 (佐野真慈、安里洋輔)