【識者談話】少年事件記録の廃棄 基準調査し公表を 文書のデジタル化可能 山田健太氏(専修大教授)


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山田健太氏(専修大教授)

 重大少年事件の記録が全国各地の家庭裁判所(家裁)で廃棄されていた問題で、沖縄県内でも記録がたどれる2002年以降に発生した集団暴行死事件について、記録がほぼ廃棄されていることが12日までに分かった。識者の見解を聞いた。

 沖縄県内の家裁でも少年事件の記録がほぼ廃棄されていたが、裁判所はどのような基準で廃棄していたのかを調査し、公表すべきだろう。特別保存の対象かどうかについて、裁判所内でどのような認識でいたのかを明らかにすべきだ。

 裁判所は、三権の中でも最も情報の公開に後ろ向きの機関である。記録は公文書管理法の目的条項にある通り、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」だ。裁判所は、記録は国民共有の資源という意識改革が必要である。

 少年保護事件簿は形式的に20年で廃棄することが許されているが、あまりにも機械的な運用ではなかったか。少年事件の場合は審判が非公開などであるから、記録と事件簿の廃棄により、世の中で全く検証不能になってしまう。事件そのものも「存在しないこと」になってしまうことに対する認識のなさを感じざるを得ない。

 全ての事件の記録を保存することが物量的に大変なことは理解する。しかし少なくとも文書類に関してはデジタル化が可能である。何よりも今、司法の姿勢が問題視され、「見える化」が求められた段階で、保存スペースがないという言い訳は認められない。
 (言論法、情報法)