【記者解説】裁判所に遺族への配慮、将来的な事件検証を想定した対応が求められる 少年事件記録の廃棄


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那覇家庭裁判所

 沖縄県内で2002年以降に発生した主な少年事件で、家裁での記録がほぼ廃棄されていた。少年審判は原則非公開で記録は外部に公表されず、閲覧できる被害者遺族も全ての記録にはアクセスできない。だからこそ記録は事件概要を残す貴重な資料だ。廃棄は事件の検証を困難にし、知る手がかりが失われてしまう。

 特別保存は、最高裁通達で「世相を反映した事件で史料的価値が高いもの」などと示される。今回、県内家裁で特別保存の検討経緯は不明だった。事件の関係者や一般の要望を受けて特別保存にする規定もあるが、02年以降の事件で要望はなかったという。

 一方、身近な者の命を奪われた遺族は「そもそも記録が廃棄されると思っていない」(河井耕治弁護士)として、遺族が意思のいかんにかかわらず、特別保存の要望をしない点も指摘する。

 事件後に憔悴(しょうすい)した遺族が、ストレスなく記録にアクセスできる環境が十分に整っているともいえない。裁判所には遺族に配慮した記録保存と、将来的な事件検証を想定した対応が求められる。
 (金良孝矢)