「遺族の気持ちを分かっていない」 少年事件の記録廃棄問題 遺族の思い知る関係者が批判


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(左から)ノンフィクション作家の藤井誠二さん、「犯罪被害者支援ひだまりの会okinawa」の河井耕治弁護士

 少年らによる集団暴行死事件などの事件記録が、県内の家庭裁判所(家裁)で廃棄されていた。発生当時、全国や県内社会に衝撃を与えた事件だった。記録の廃棄により、事件の背景を検証することができなくなった。また被害者遺族らにとっても、記録は事件概要を知るための貴重な資料。遺族側の関係者は「遺族の気持ちを分かっていない」と裁判所を批判した。

 うるま市で2009年に同級生8人に集団暴行され死亡した中学2年の14歳少年の母親を取材、支援したノンフィクション作家の藤井誠二さん(58)は「記録は事件概要を知る生命線でとても大事なもの。その重要性を認識せず簡単に廃棄し、怒りと落胆がある」と憤った。

 母親は事件発生から約1カ月後、加害少年の少年審判で意見陳述するため、家裁に通って事件の記録と対峙(たいじ)した。分厚い電話帳数冊ほどの記録のコピーを取ったり、写真を撮ったりした。その中に、暴行を受けた息子の凄惨(せいさん)な写真もあった。

 涙が止まらなかったが、「私がちゃんと見て、かたきを取るんだ」「こんなふうに殺したやつに写真を見せるんだ」と気を強く持ってカメラに収めたという。

 だが、当時の記録のほとんどは廃棄された。加害者6人分が22年3月に廃棄され、当時13歳だった2人分のみ保存されていた。保存は、最高裁が一連の廃棄問題を受け、22年10月に各裁判所に廃棄の一時停止を指示したことが理由だった。

 藤井さんは、全ての事件記録は財産として「海外にならい半永久的に保存したり、電子化で保存したりするなどの具体的対応を提示してほしい」と訴えた。

 「犯罪被害者支援ひだまりの会okinawa」の河井耕治弁護士(56)は長崎県出身で、同県で03、04年に起きた重大少年事件の被害者支援に携わった。両事件でも記録廃棄が発覚。「廃棄はその記録が大切にされていないということ。嫌な思いをしていない遺族はいない」と指摘する。裁判所の管理体制に疑問を呈し、「まずは事件の全件永久保存が必要だ。特別保存の可否を決定をする場合は、遺族側の意見を聞いてやるべきだ」と要求した。
 (金良孝矢)