琉舞名作の神髄示す 志田房子・真木の会 東京・国立劇場で公演 建て替え前の劇場に感謝込め


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「作田」を踊る志田房子=6月30日、東京都千代田区の国立劇場(提供)

【東京】琉球舞踊「志田房子・真木の会」が6月30日、千代田区の国立劇場で特別公演した。芸術選奨文科大臣賞の志田真木が古典女踊りの名作「伊野波節」で舞台の幕開けを飾った。流麗な音色に合わせ、技巧を凝らしたこねり手、感情を微妙にやどした表情表現を重ね、名作の神髄をよみがえらせた。

 公演は現国立劇場が今秋で建て替え工事に入る前に、劇場への感謝を趣旨に催した。上皇ご夫妻も観覧に訪れ、公演を楽しまれた。

 第1部は志田親子らによる古典と創作の3作が続いた。人間国宝で、琉球舞踊重踊流宗家の志田房子は、国立劇場開場記念の公演でも舞った「作田」に臨んだ。人間国宝の平良敏子さんによる芭蕉布の衣装が踊りに淡い彩りを加え、祝いの歌を格調高い舞踊に昇華させた。1部最後は志田真木による「黒髪」。本條秀太郎の歌と三味線で、琉球と大和の美が織り成す舞を機微な所作で表現した。ひとり寝の夜を明かす切なさを時に憂いを帯びたまなざしで表現した。

「桃売姉小」を踊る志田真木(左)と仲程めぐみ(提供)

 趣を変えた第2部は、過去と現在、未来の沖縄へ思いをはせる構成。安次嶺律子、前川美智子、根路銘広美、仲程めぐみが賛助出演し、志田房子の創作「蛍火」を冒頭で熱演した。志田房子は「浜千鳥」を踊った。柔らかな舞に故郷沖縄を思う心があふれていた。房子が創作した「桃売姉小(むむういあんぐぁー)」は、志田真木と仲程めぐみがはつらつと舞い、房子の母が見たという沖縄の原風景を舞台に届けた。

 結びの演目は沖縄伝承の神事、営みを伝える創作舞踊「ゆがふ(世果報)」。田園風景の人々の姿と日々を生き生きと伝え、永遠の平和への祈りを舞に込め、舞台をまとめた。

 房子は「琉球舞踊を57年の節目の国立劇場で多くの皆さまにご覧いただけて感慨深い」。真木は「国立劇場の掉尾(ちょうび)を飾る舞台を体感でき感動的だった」と述べた。

 舞踊はこのほか、東江裕吉、新垣悟、佐辺良和、田口博章、大城ゆう紀、姫野多美、前田恵、高江洲美沙、平木澄恵、知念捷が出演。地謡は「組踊音楽太鼓」人間国宝の比嘉聰が太鼓と歌三線、歌三線が新垣俊道、仲村逸夫、大城貴幸、箏が宮城秀子、笛が入嵩西諭。
(斎藤学)