「こだわりない」にこだわる? やっぱりステーキ社長 義元大蔵氏に聞く海外進出、急成長の秘密<焦点インタビュー>


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 2015年に那覇市松山に3坪の店舗をオープンし、わずか8年で全国に約90店舗を展開するステーキチェーンに急成長した「やっぱりステーキ」。14日にはネパール東部のチトワン郡に海外1店舗目をオープンし、今夏にはオーストラリアのシドニー中心部にも店舗をオープンする予定だ。

 運営するディーズプランニングの義元大蔵社長は今後3年以内に海外各地に30店舗のオープンを目指しているという。今後の戦略や展望を聞いた。

―海外進出の計画はいつから。

 「18歳から約10年間をアメリカで過ごし、いずれは海外で勝負したいという強い思いを抱いていた。コロナ禍で日本経済が疲弊する中、国内だけで勝負をするよりも積極的に海外に出て外貨を獲得し、国内の店舗運営にも生かしたいと考えた。コロナの影響で予定よりも遅れたが、昨年から本格的に準備を始めた」

―海外1店舗目にネパールを選んだ理由は。

 「中国、台湾、シンガポール、フィリピンなどの候補も挙がっていたが、既に日本企業が多く進出している土地ではなく、まだ開拓されきっていないいわゆるブルーオーシャンといえる場所でスタートを切りたいと考えた。ネパールは経済発展が著しく、この5年間で平均月給が約4倍に跳ね上がった。首都のカトマンズではなく、あえて都市から離れたチトワン郡を選んだのは、成長性を見込んでのことだ。農業が主要産業で、日本人在住者や海外からの観光客もそれほど多くないが、富裕層の増大などこれから大きく伸びるポテンシャルを秘めている」

―2店舗目としてオーストラリアでも準備中だ。

 「ネパール店では宗教上の理由で牛を食べない人が多いためヤギ肉を中心としたメニューを展開するが、オーストラリアはオージービーフが広く流通し、ステーキ文化も根付いている。現地の生産者と直接コミュニケーションを取り、国内での商品力向上やコストパフォーマンス改善にもつなげたい。調味料の運送や必要な資材の運搬、工期の遅れなど国の事情やコロナの影響もあり、店舗の準備にはそれぞれ苦労はあったが、今後の海外進出に向けていい学びとなった」

―海外での成功の鍵は。

 「日本の文化や常識を押しつけるのではなく、現地の食文化や習慣をリサーチした上で柔軟に取り入れる。『やっぱりステーキ』の特徴は、あえて焼き加減を聞かずに客が溶岩石の上で肉を焼き、自分好みの焼き加減で食べられるシステムや組み合わせを自由に楽しめる豊富なソース、調味料だ。いい意味で『こだわりがない』ことにこだわる。ネパール店の営業時間はチトワンの農民たちのライフスタイルに合わせて午後2時から同10時とする」

 「オーストラリアでも現地の調味料や味付けを採用する。国内店舗もそうだが、まずはオープンして、営業時間やメニューは客の反応を見てフレキシブルに変更、調整する。店としての核さえしっかり持っていれば、微調整はむしろ店舗の発展に必要だ。固定観念に縛られず、常に自由な発想で挑む」

―今後の海外での展開について。

 「ネパール、オーストラリアを皮切りに、3年間で30店舗を目標に店舗を拡大する。ステーキの本場アメリカはもちろん、欧州にも挑戦したい。沖縄のステーキ食堂が世界で通用することを証明する」

(聞き手・普天間伊織)