今夏も新型コロナウイルスの流行が続き、沖縄県内の医療機関や救急搬送がひっ迫する中、北部地域では医療連携で独自に感染者情報を集約し、急性期病院の機能を守るため、入退院調整を効率化している。そのため、入院先が見つからない事態はほぼない。県立北部病院の永田恵蔵医師は「医師や関係者の協力があってこそ。ただ医療体制が発展しても、それを上回るような感染者数の増加が懸念される」と語る。
新型コロナ感染症の5類移行後の定点報告は県内54医療機関の情報を基にしているが、北部地域の定点医療機関は県立北部病院と今帰仁診療所の2カ所のみ。流行の実態を捉えられず、病院間連携が滞っていた。
そのため、北部地区医師会は6月中旬から北部の14診療所を受診した新型コロナ、インフルエンザ、その他の感染症の患者数を集約。毎週月曜日に行われる医療関係者向けウェブミーティングなどで情報を共有し、地域流行と医療需要を分析している。県立北部病院による症状別の分析を踏まえ、急性期、回復期、慢性期の医療機関がそれぞれ治療に当たる。
同医師会の稲嶺盛嗣事務局長は「各診療所では互いの負担感を知ることで連携が強まっている。また、コロナ診療の入り口が見通せることで病院の負担軽減にもつながる」と、副次的な効果も強調する。
病院と診療所が役割を分担する「病診連携」により地域の慢性期病院などでは、呼吸不全の患者への酸素投与だけでなく、看取りまで対応しているという。
野毛病院(本部町)の出口宝院長によると、陽性患者の転院を受け入れることもあるとして、「北部ならではの連携を最大限に発揮している」と語る。
各病院の協力により、県立北部病院や北部医師会病院では「断らない医療」を継続。名護市消防本部によると、管内では6~7月は救急搬送が増加しているが搬送困難事案はない。
県立北部病院では、コロナ専用病床56床を重症患者の対応に注力できているが、久貝忠男院長は「ひっ迫度は昨夏に一般医療を制限した『緊急フェーズ』の状態。数の威力は大きい」と、今後の感染増加を危惧する。
コロナ禍の約3年では例年7~8月に感染拡大が続いており、今夏の流行もピークはまだ見えない。永田医師は「地域医療が発展しても、それを上回る患者数になれば受け止められなくなる」として、感染対策の強化を呼びかけた。
(嘉陽拓也)