「こんなつらい絵本制作は初めて」 講談社絵本賞「なきむしせいとく」 贈呈式で作者の田島さん


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贈呈式であいさつする田島征彦さん=東京都千代田区

 第54回講談社絵本賞を「なきむしせいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語」(童心社)で受賞した絵本作家の田島征彦さんは、贈呈式の壇上で「こんなつらい絵本制作は初めてだった」と振り返った。

 作品の舞台は1945年の沖縄。泣いてばかりの主人公の少年せいとくは戦況が厳しくなる中、母と妹と一緒に島の南へ逃げることに。沖縄の美しい自然や、戦場の日本兵や米兵の振る舞い、爆弾から逃げ惑う人々の様子をせいとくの目を通して描き、戦争の悲惨さと平和への願いを伝える。

 田島さんは沖縄をテーマに40年以上取材を重ね、絵本を作ってきた。自身も大阪で空襲を体験したが、「地上戦とは全く違う」と表現手法に悩んだそうだ。

 沖縄戦で生き残った人々の手記を何度も読み、その場に知り合いや肉親がいることを想像しながら描いたといい、「つらくて恐ろしくて、大きい声で何度も叫んだ」と打ち明けた。

 「『なきむしせいとく』は過去の話ではない」と田島さん。

 石垣島や宮古島に置かれた自衛隊のミサイル部隊に懸念を示し、「緑に包まれた島が焼け、逃げ回る子どもたちが出てくるのではないか。そう思うと、絵本ができた後もつらい」と語った。