日米の研究者11人が戦争回避で提言 「抑止一辺倒では衝突コース」 緊張緩和へ日本に独自外交促す


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この記事を書いた人 琉球新報社
報告書を発表する(左から)芦澤久仁子アメリカン大専門講師、渡邊啓貴帝京大教授、添谷芳秀慶応大名誉教授、マイク・モチヅキ米ジョージ・ワシントン大准教授、須川清司東アジア共同体研究所上級研究員=24日、東京都の日本記者クラブ

 【東京】国際政治や安全保障を専門とする日米の研究者有志11人でつくる「『アジアの未来』研究会」は24日、抑止や米国依存に偏った議論を抜けて戦略的に独自の外交を進めることを提言する報告書を発表した。戦争を回避するため「日本は米国との協力を維持しながらも外交を通じて米中競争の緩和に向けて指導力を発揮すべきだ」と訴えた。アジアを中心に他の中堅国と連携する「ミドルパワー外交」の推進を求めている。

 同研究会共同代表の添谷芳秀慶応大名誉教授やマイク・モチヅキ米ジョージワシントン大准教授らが同日、東京都の日本記者クラブで会見を開き、報告書の内容を知らせた。添谷氏は「抑止は重要だが、一辺倒では米中の衝突コースに進む。抑止以外で衝突を避ける道筋を考えることが重要だ」と強調した。

 報告書の題は「岐路に立つアジアの未来|平和と持続的な繁栄を実現するための日本の戦略」。沖縄の基地負担についても言及している。「日本の防衛力を強化し、日本の領土防衛に大きな責任を引き受けることは在日米軍を削減する契機となり得る」として、自衛隊の水陸機動団が南西防衛の責任を負うことで在沖米海兵隊を削減できる可能性があると記した。

 米軍基地負担が自衛隊に置き換わるだけではないのかとの問いに、モチヅキ氏は「米軍基地の負担が維持されたまま、その上に自衛隊の南西シフトが進んで県民の負担が増えることを懸念している」と説明した。添谷氏は「報告書は問題提起にとどまっているが、まず発想の転換がなければならない」と答えた。
 (明真南斗)