【深掘り】オスプレイ事故報告で「政府の言う安全性」の崩壊が現実に エンジントラブル発生時の安全機構が働かず 公表後、日米で対応に違い


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米軍機の騒音測定局で撮影されたMV22オスプレイの連続写真=25日午前11時27分、宜野湾市野嵩(宜野湾市提供)

 米海兵隊が21日に公表した、米カリフォルニア州で昨年6月に発生したMV22オスプレイ墜落事故の調査結果を受け、防衛省が陸上自衛隊のオスプレイの飛行見合わせを決めるなど波紋を呼んでいる。日本側が慎重に対応する一方、米軍はこの日も飛行を継続し、対応の違いも際立つ。オスプレイは2012年の県内配備時から「欠陥機」として反発が拡大。「政府が言ってきた安全性はもろくも崩れた」(県関係者)と懸念は再燃する。

 原因となった不具合は「二重のハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)」と呼ばれ、駆動システムに深刻な損傷をもたらすという。

 安全強調

 オスプレイには2つのエンジンが搭載されており、片方のエンジンが止まった時にも、もう片方のエンジンから動力を供給する仕組みがある。

 だが、今回の事態ではその安全機構も故障する「複合緊急事態」が発生した。片方の翼で起きたHCEが反対側にも連鎖する可能性も記述され、そもそも安全機構が働きにくい構造が浮かぶ。

 報告書によると、HCEは800時間以上飛行した特定の部品を有する機体で発生する傾向がある。過去の事故や危険時案を調べなおした結果、10年3月から22年8月の間に、計15件のHCE事象が発生していた。

 オスプレイは12年の県内配備前からエンジン停止時にもローターが回転し軟着陸する「オートローテーション」機能が働かないと指摘されてきた。従来のヘリには備わっている機能であり、市街地上空も飛ぶ普天間飛行場への配備に当たって安全性が問われ、配備反対の世論が広がった。

 これに対し防衛省が12年に出した解説書は「2つのエンジン出力が完全に停止する状況はほとんど考えられない」と安全性を強調した。

 だが、今回の事故ではエンジントラブル発生時の安全機構が働かず、当時の懸念が現実のものになったとみられる。

 衝撃

 防衛省関係者は「オスプレイは評判が悪い」として陸自機の飛行に慎重な姿勢を見せる一方「100%不具合が起こらない機械はない。限界までその可能性を減らすことが重要だ」と語り米軍の対応は「妥当だ」と評価した。

 一方、かねてよりオスプレイの飛行に懸念が広がっていた県内では不安が広がる。

 普天間飛行場がある宜野湾市担当者は「人為的要因でなく、機体そのものに問題があったことに驚きを隠せない」とした上で「米軍の説明からも常に危険性があると認識している。確実な安全が確保されるまでの飛行は不安でしかない」とため息をついた。問題の背景や部品の使用年数など詳細な情報を求めていく考えを示した。

 県幹部は「構造的欠陥があったと言えるのではないか。そんなものが沖縄の市街地の上を飛んでいたのか」と驚きをもって受け止めた。

 今回の事案では要請などを行っていないが、県はそもそもオスプレイの配備見直しを求める立場。「見直しを求めていく根拠になる」と強調した。
 (知念征尚、明真南斗、名嘉一心)