〈ドクターのゆんたくひんたく〉152 家族が突然認知症になった? 「せん妄」の恐れも 受診を


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 「家族が突然認知症になった」―。このような相談を、患者さんのご家族からいただくことがあります。ほんの数日前まではいつも通り生活できていたのに、ある日急にぼんやりし、ちぐはぐなことを言う、理解力が悪くなった、これまでできていたことができなくなった、落ち着かず行動がいつもと違う…といった具合です。ご家族のこのような姿をみると、認知症を疑うのも無理はありません。

 しかし、一概には言えないものの、認知症は、少しずつ症状や生活上の困りごとが出てくる場合がほとんどです。数日のうちに高度な認知症のような状態になってしまった場合は、別の原因も考えておく必要があり、その一つが「せん妄」という状態です。

 せん妄は、身体の不調などで、脳の機能低下が生じているときにみられることがあり、軽い意識障害が背景にあります。せん妄になると、認知症やうつ状態のようにみえたり、実際にはいない人がいるなど幻視のような発言がみられることもあります。大きな病気で入院し、手術をした後など、身体に大きな負担がある場合に生じやすい状態ですが、日常生活の中でも、高齢者を中心に数%~10%程度の方にみられるという報告もあります。

 ご高齢であったり、基礎疾患があったり、気付かれていないだけで実は軽い認知症があった、といった方の中には、脱水や風邪、お薬の影響など、日常生活の中で生じる軽い不調でもせん妄となることがあります。

 また、せん妄は軽い不調だけでなく、脳血管障害や低血糖など、健康上の大きな問題が生じているサインかもしれません。せん妄が長く続く場合は、身体の不調も長く続いていることになりますので注意が必要です。

 このように、ご家族が急に認知症のような状態になってしまった場合、身体の不調が隠れている可能性があります。このため、まずはかかりつけ医や、せん妄や認知症に詳しい心療内科・精神科を受診し、診察や検査を受けた方がよいと考えられます。

(外間朝諒、北上中央病院 精神科)