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母「ありのまま話してほしい」園で一体何が 生後3カ月乳児死亡から1年 沖縄県警、死因特定至らず


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昨年7月に沖縄県那覇市の認可外保育園(同8月に廃止)で、一時預かりされた生後3カ月の男児が心肺停止の状態で救急搬送された後、死亡した事故の発生から30日で1年となった。1年を前に男児の母親が本紙にコメントを寄せた。母親は「どうして亡くなってしまったのかは分からないままです」と吐露し、真相究明を強く願った。一方、県警は複数の専門機関に依頼し、男児の死因を調べている。捜査関係者によると、いずれも死因は「不詳」で特定には至っていない。県警は引き続き死因の特定を進めるとともに、関係者から話を聞いて慎重に捜査している。

亡くなった男児の名は涼空(りく)ちゃん。今も「息子を思う気持ち、愛情も悲しみも含めて薄れることなく変わらない」。母親によると、保育園の園長だった女性と連絡が取れなくなっており、「当日見たこと、感じたこと、全てをありのままに話してほしい。それが一番の願いだ」と求める。

事故後の市の調査では、この園が人手不足などを理由に安全対策をおざなりにしていた実態が明らかになった。事故予防マニュアルもなく、乳幼児の健康状態の観察や乳幼児突然死症候群予防についても体制が不十分だった。

市は再発防止策として、事故防止研修を実施し、指導監督を担当する課に職員1人を新たに配置した。ほかにも睡眠時呼吸モニターを導入するための補助事業や夜間保育を行う施設に有資格者の確保を促す事業を始めた。昨年12月には学識経験者らで構成する検証委員会を立ち上げ、関係者へのヒアリングなどを通じて再発防止策の提言に向け議論を重ねている。

28日、8回目の検証委の会合終了後に取材に応じた照屋建太会長は「年度末までに今後このような事故が起こらないようしっかり(再発防止策を)提言したい」と述べた。

委員会での議論について、母親は「再発防止につながることを考えるのは大切なことで、協力したい」と語った。一方で「(息子は)保育環境を良くするために生まれてきたわけでも亡くなったわけでもありません」と複雑な心境を吐露する。

事故が起きた園に限らず慢性的な人手不足や財政難で厳しい保育環境を抱える認可外施設は少なくない。市によると、7月28日現在、市内74カ所の認可外保育施設のうち、7カ所は有資格者を確保できないなどの理由で指導監督基準を満たしていない。6月には市寄宮の認可外施設が十分な保育従事者を確保できず、閉園した。

市の担当者は「簡単に環境改善が図られることはない。市として、検証委員会から出される提言を踏まえて二度と同様の事故がないようにしたい」と語った。

(吉田健一、大嶺雅俊)