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障がい者は「更生」する存在なのか? 当事者ら「偏見を人々に植え付ける」 名称変更に県も「前向き」 沖縄


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 障がい当事者が運営する県自立生活センター・イルカ(長位鈴子代表、宜野湾市)が県に対して県身体障害者更生相談所の名称変更を求めている。相談所の名称が「障がい者は更生する存在」という人々の認識を生み、障がいのある人々への無意識的な差別や偏見につながるとの懸念による。仲村美和さん=沖縄県北中城村=は、知的障がいのある息子の伊織さんとイルカで活動を共にしてきた。仲村さんは、「行政用語に『更生』が残っていると、無意識で無自覚な誤解と偏見を人々に植え付けたままにしてしまう」と懸念する。

障がい者への偏見や差別の解消を訴える仲村美和さん(右)と自立生活センターイルカのメンバーら=7月14日、那覇市泉崎の県庁

 息子伊織さんが今年20歳を迎えたことで、知的障がいがあると判定された人に交付される療育手帳の管轄が児童相談所から知的障害者更生相談所に移った。この際、仲村さんは相談所の名称に違和感を抱き、イルカのメンバーに思いを共有した。メンバー内で共感が広がり、同所へ質問状を提出する流れに至った。

 7月14日、仲村さんはイルカのメンバーや相談員の早坂佳之さんと県子ども生活福祉部障害福祉課を訪れ、同課職員と情報交換した。

 イルカのメンバーらは、2000年の地方分権一括法の施行を受け、群馬県など複数の都道府県が相談所の名称を「障がい者総合福祉センター」などに変更したことを示し、「沖縄でも名称の変更が可能なのではないか」などと提言した。

 イルカが提出した質問状の「更生相談所の名称を変える予定はあるか」との質問に対する5日付の更生相談所からの回答では「現時点ではない」とされていたが、14日の情報交換の場では、普天間みはる障害福祉課長が「名称変更を前向きに検討する」との考えを示している。

 日本が14年に批准した障害者権利条約第17条は「全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する」と規定している。早坂さんはこれをもとに「障がい者はありのままで認められなければいけない。他者の決定で身体や思想を変えられるべきではない」と指摘した。

 昨年8月には、国連障害者権利委員会で「日本政府との建設的対話」が行われ、同委員会は翌9月に統括所見を提出している。統括所見は、障害者権利条約に含まれる「障害の人権モデル」との調和の欠如や、手帳制度などを含む「障害の医学モデル」の永続がみられるなどとして、日本政府に対して懸念と勧告を示している。

 仲村さんは「障がいの概念が医学モデルから人権モデルに変わってきている中、それに合わせて表記の仕方も変えていくべき」と主張した。イルカのメンバーからは「名称変更の話し合いがある場合は、(障がい)当事者を会議に入れてほしい」と要求する声が聞かれた。

(西田悠)