小中学校の統廃合問題を考えるシンポジウム(共催・沖縄自主上映会促進ネットワーク、沖縄産業計画)が7月17日、那覇市の桜坂劇場で開かれた。栃木県宇都宮市立城山西小学校の統廃合問題を題材にしたドキュメンタリー映画「奇跡の小学校の物語 この学校はなくさない!」の上映後に開催され、映画監督の安孫子亘(あびこわたる)さんらが参加者と一緒に沖縄での事例や解決方法を話し合った。
パネリストには安孫子さんの他に、琉球大学教授の本村真さん、伊平屋村教育長の与那覇了さん、沖縄産業計画研究員の多和田真理さんが登壇した。
安孫子さんは映画撮影のきっかけについて「統廃合の危機にある学校はたくさんある。(映画の題材となった)城山西小は統廃合問題を乗り越えたが、(尽力した)校長や先生、子どもや父母は卒業や異動でいなくなる。乗り越えた事実を残さなければといけないと思った」と説明した。
与那覇さんは、在校生不在のために小学校が休校状態にある伊平屋村立野甫小中学校の現状を紹介した。
野甫島にある同校は現在、中学1年生と3年生が1人ずつ、計2人の生徒が通っていて、伊平屋島の伊平屋小との統合案も上がっている。与那覇さんは「学校は地域コミュニティーの場になる。簡単に廃校にはできない。伊平屋と統合しても、いずれまた同じ問題に直面する。この島にしかない魅力を生かした、島だからできる教育の魅力を充実させる必要がある」と力を込めた。
本村さんは、自身の研究分野である子どもの貧困や虐待などについて触れ、「学校だけでは解決できない。地域全体の中で子どもを見ることが大事だ。学校と保護者、地域が一体となった映画の実践は、学校の統廃合問題だけでなく、子どもを取り巻く問題の一つの解決策も描かれていた」と感想を述べた。
多和田さんは、座間味村立慶留間小中学校などで実践されている離島留学の事例を紹介し、「学校がなくなると過疎化につながってしまう。慶留間でも子どもが地域を元気にしている。子どもの不在は地域の危機だ」と話した。
(嘉数陽)