〈ドクターのゆんたくひんたく〉153 子どもの風邪 抗菌薬は効きません


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 お子さんが風邪をひいた時、抗菌薬を処方されたことはありますか? 風邪を引き起こす原因の多くはウイルスであることが知られており、風邪に対する抗菌薬の有効性は証明されていません。さらに、不必要な抗菌薬を服用することで一般に使われる抗菌薬が効かない“耐性菌”の増加につながることが指摘されています。

 これは全世界的に問題となっており、2050年には「耐性菌による死亡者ががんによる死亡者を上回るのではないか」と予測されています。耐性菌が増えている一方で、残念ながら抗菌薬の開発は進んでいません。日本でも16年に「薬剤耐性対策アクションプラン」が策定され、20年までの数値目標が掲げられましたが、現在も多くの課題が残っています。

 日本で処方される抗菌薬の約9割は内服薬であることが報告されており、外来における抗菌薬処方の適正化を図るためにさまざまな取り組みが行われています。ただし、かかりつけ医の先生が必要と判断して処方された抗菌薬は指示通りに服用してください。服用の中断による治療失敗も耐性菌の発生につながるからです。

 風邪をひいた時にできることは限られていますが、こまめな水分摂取を行い、無理せず休養することが大切です。また「風邪にハチミツが有効」と以前から言われていたのですが、その効果が医学論文でも示されてきています。スプーン1杯程度のハチミツを摂取することで咳の頻度を減らし、気分を落ち着かせて睡眠の質の改善が期待できます。ただし、咳の持続期間を短縮する効果に関しては不明です。また、ボツリヌス菌の毒素による乳児ボツリヌス症の危険があるため、1歳までの乳児は摂取してはいけません。

 お子さんが小さいうちは、毎月のように風邪をひいて心配になるかもしれませんが、徐々にその頻度は減っていきます。かかりつけ医の先生やスタッフと共に、子どもたちの成長を見守っていきましょう。

(荒木かほる、県立中部病院)