〈ドクターのゆんたくひんたく〉190 成長期野球肘 県内の小学生検診継続へ


〈ドクターのゆんたくひんたく〉190 成長期野球肘 県内の小学生検診継続へ
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 沖縄県は野球人口比率が最も高い県として知られ、年代を問わずたくさんの方々が日常で野球を楽しんでいます。しかし県内でスポーツ障害を診療する中で、成長期の野球肘障害(成長期野球肘)の選手が後を絶たず、指導者も含め投球障害に対する教育や予防を普及させる必要性を感じています。

 成長期野球肘の中でも上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)は関節軟骨に損傷を生じる疾患で、早期に適切な治療が行われないと生涯にわたり肘に障害を残すことがあります。

 発症初期(小学生)では症状が乏しいため、肘痛を有して病院を受診する時期には病態が進行し手術を要することが多いのが特徴です。発症初期に治療が開始できないため、県内では病態が進行した中学生の時期に手術症例が数多く存在しています。

 県内でOCDの手術を行っている主な4施設を調査したところ、2017~21年の5年間で75件の手術症例があり、平均年齢は13・7歳(中学生)でした。県全体ではさらに症例数が多いことが予測されます。

 このような現状で、手術症例を減少させる取り組みとして、小学生の無症状の時期(発症初期)に超音波を用いてOCDを拾い上げる野球肘検診が全国各地で開催されるようになってきました。県内でも、23年9月3日に友愛医療センターと中頭病院の2施設で小学生を対象とした県内初となる沖縄野球肘検診が開催されました。

 医師による診察(超音波含む)のみならず、理学療法士による身体機能測定や障害予防としてストレッチ法の指導などが行われました。検診の結果、初期のOCD患者を6人拾い上げることができ、検診の有用性を感じています。

 今回は県内初の試みであったため、主要大会の上位8チームのみの検診でしたが、今後はチーム数を拡大し継続していくことが重要と考えています。

 最後に、今回の検診では医療従事者のみならず学生も含め100人近いボランティアスタッフに協力して頂きました。スタッフの野球に対する情熱や選手に対する愛情を感じる機会となり、スタッフへの感謝とともに改めて沖縄県民としての誇りを持つことができました。

 (上原大志、友愛医療センター 整形外科)