初の酸素ステーション開設も受け入れゼロ 沖縄、台風時の在宅療養者向け 周知不足が課題


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新型コロナの「ケアステーション」を活用し、台風6号の暴風警報中に県が設置した在宅療養者向けの「酸素ステーション」(提供)

 台風6号が再接近した4~6日、県保健医療部は、在宅酸素療法を続ける患者向けに最大25床を準備した「酸素ステーション」(酸素ステ)を開設した。軽症の新型コロナ患者を受け入れる「ケアステーション」(ケアステ)を転用した初の試みだが、緊急措置による周知不足で受け入れはなかった。ただ、福祉避難所の開設が7市町村にとどまるなど、在宅療養者の災害対応に課題が残る現状に県が危機感を強めた対応と言える。

 県や医師によると、台風前になると、業者が日常的に医療機器を使用する在宅療養者に対して2~3日分のバッテリーや酸素ボンベを用意するが、停電が長引くと足りなくなる恐れがある。実際に4日以降に酸素などが足りなくなり、困った患者が病院に支援を求める例があった。

 中頭病院の仲村尚司医師によると、同病院では在宅療養者7人の搬送を受け入れたが、いずれも医療的な対応は必要ではなく、同病院の地域連携室が受け入れ先の確保に尽力したという。仲村医師は「暴風警報中に患者が救急搬送を求めると病院が対応しないといけない。災害時の病院は避難所として適切ではないので、行政側は想定外を想定して対応してほしい」と語る。

 通常、重症度の高い在宅療養者は行政や医療機関などが事前に避難先などを調整するが、自らで日常生活を送る在宅酸素療養者の避難は自主判断になる。

 ただ、県災害医療コーディネーターの出口宝医師(野毛病院)によると「酸素濃縮器のみを使用する患者の避難先に電源を確保することで対応できる場合が多い」という。

 7日に開かれた県医師会や県、医療機器メーカーによる「県災害時HOT(在宅酸素療法)対策会議」では、市町村が開設する一般避難所で在宅酸素療法療養者を受け入れられる体制づくりについて話し合われたという。同会議に参加した出口医師は「福祉避難所の設置はハードルが高い部分もあるので、行政は一般避難所に非常用電源を確保し、在宅酸素療法療養者が安心して避難できる体制を整えてほしい」と呼び掛けた。
 (嘉陽拓也)


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