prime

【連載】「駅近」暮らし沖縄でも浸透 沿線は地価上昇、人口も増 <ゆいレール開業20年課題と展望・中>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
今後の開発が期待される「てだこ浦西駅」周辺=10日、浦添市前田(喜瀬守昭撮影)

 「完売御礼」。那覇市真嘉比1丁目、国道沿いに建設中の平均5千万円の分譲マンションは、発売からわずか1カ月半で28戸全て成約した。沖縄都市モノレールのおもろまち駅から徒歩5分の好立地物件。新都心近郊は、数年前から土地の坪単価が150万円を超える。

 那覇市内の地価は上昇傾向にあるが、特にゆいレールの沿線は需要が高い。今もマンション建設が続くなど駅周辺の人口増加率は那覇市全体に比べても高いという。背景に区画整理事業地域にルートが設定されたことにある。計画段階時に区画整理が進められていた小禄方面をはじめ、おもろまちや真嘉比地区はゆいレール開通後に開発が活発化した。牧志駅周辺も再開発された。

 「購入者の6割は30~40代だ。通勤を考慮した住宅の求め方をしている。モノレール移動が車より安全という高齢者のニーズもある」。駅近のマンションを販売する不動産関係者は、引き合いの強さを実感する。「この20年で習慣も変化してきている」と話し、車社会の沖縄で少しずつ「駅近」の暮らしが浸透してきていると分析した。

 19年、首里駅から浦添市側に延長した4駅が開通した。延伸先のてだこ浦西駅周辺は畑地だったが、15年に事業計画を決定、17年度から工事が始まった。現在、調理師専門学校やディスカウントストアなどが軒を連ね、24年春にはイオン琉球が開業を予定する。

 駅には自動車992台(8割定期駐車)を収容できるパークアンドライドも隣接。23年4月現在、定期駐車は前年同月に比べ約1・3倍の736台(約93%)まで契約を伸ばし、中北部からの結節点として徐々に認知度を高めている。

 町づくりはまだ半ばだが、地権者でつくる浦添市てだこ浦西駅周辺土地区画整理組合の又吉眞孝理事長は「浦添は沖縄の東西南北どこにでも行きやすい。営業などアクティブさが求められる業界の人々にとっても利便性が高い」とゆいレール延長の利点を強調し、那覇市の成功事例を重ねる。

 西原町側でも区画整理が進んでおり、ゆいレールにとっても集客につながる可能性がある。渋滞緩和策と併せ、新たな都市計画や公共交通計画の試金石となりそうだ。
 (謝花史哲、藤村謙吾)

 それでも延伸などによる設備投資などがかさみ、18年度決算の時点で27億1700万円の債務超過に。区間延長事業を終えたばかりだったが、19年度から3両化導入加速化事業が始まった。DES(債務の株式化)で資金調達を実現し、3両編成車両の発注にこぎ着けたものの、債務超過は横たわったままだ。さらにコロナ禍の行動制限で20、21年度は乗客数が激減し、赤字転落が財務を圧迫した。

 経営的には再び難局を迎えているが、節目の今年、県内は人流が戻るなどコロナ禍からの回復が顕著になっている。22年度は1日平均乗客数が4万人後半まで復活。23年度(4~7月)は5万1777人で推移する。10日からは輸送力が1.5倍の3両が始動する。2編成から運行を開始し、9編成を稼働させ、混雑緩和を図る。これにより2両を合わせ現在の21編成から25編成に増強されることになる。