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空砲や鉄くず…終わり見えぬ米軍廃棄物の除去 市民ら「真の世界遺産」訴え 北部訓練場跡 沖縄


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米軍北部訓練場跡地で金属探知機をかざして廃棄物を探す作業員ら。報告書には「異常点の確認状況」との説明が付いている(事業報告書より)

 山盛りの空砲や鉄くず、金属探知機を地面にかざす作業員ら―。沖縄本島北部やんばるの世界自然遺産登録地に隣接する米軍北部訓練場の返還地では、沖縄防衛局による米軍の廃棄物処理が続いている。市民が公開請求した報告書からは、「終わる気配のない」処理作業の実態が見えてきた。

 報告書によると2022年3月から8月まで行われた処理事業では、空包や火工品計4580個、廃プラスチック類、金属くず、ガラスくずなど計1227キロが回収されたほか、訓練場では使われないはずの実弾2発もあった。

 報告書を公開請求した「基地引き取り党」の中村之菊(みどり)さんは、同年11月にも現地で作業員の処理現場に遭遇した。金属探知機に反応した場所の土を掘り、出てきた空包や鉄くずなどを回収していた。中村さんは「税金が使われている事業だが終わる気配がない」と感じた。

 訓練場の返還跡地について政府は汚染物質の撤去など「支障除去」を終えたとして地権者に土地を引き渡した経緯があるが、報告書や現場の様子からは「(政府の)『支障を除去した』というのが適切な表現でないことが分かる」と指摘する。

 環境問題に取り組む市民団体「オキナワ・エンバイラメンタル・ジャスティス・プロジェクト」(吉川秀樹代表)は、7月14日に沖縄防衛局に申し入れを行った。廃棄物撤去や環境復元の調査報告書を県民が読めるように防衛局のウェブサイトで公開すること、跡地で除去作業を行っていることを明記した看板の設置―などを求めた。

 防衛局側は「適切に対応する」と述べるにとどめたという。国との交渉内容は、ユネスコ世界遺産センターや国際自然保護連合(IUCN)への報告に反映させていく方針だ。吉川さんは「やんばるの森を米軍廃棄物のない『真の世界遺産』にするために要請を続けていく」と話した。

 チョウ類研究者の宮城秋乃さんは訓練場跡地に残る米軍廃棄物の実態を訴え続けている。「やんばるの自然の豊かさを語る人と米軍廃棄物の問題について語る人で分断が起こっている」と指摘。世界自然遺産に登録され、環境保全や観光による地域振興に期待する声が上がる中で「自然の恩恵を受けている人もみんなで解決に向けて考えていくべき問題だ」と話した。
 (慶田城七瀬)