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2度目の異動打診で退職を決断 島ヤギ散歩に生き物博物館…辺土名高の名物教師が選んだ新たな道


この記事を書いた人 Avatar photo 武井 悠
東竜一郎さんと辺土名高校で飼育している琉球犬=大宜味村の同高校

 2014年から辺土名高校で生物を教えてきた東竜一郎さん(49)は、同校とやんばるの発展に今後も尽力するため、教員生活の第一線から退く決断をした。

 人口減少で生徒数が減少していた同校で、東さんはフィールドワークの積極的な実施や生き物博物館の設置などに取り組み、現在は本島中南部や県外からの入学希望者も増えた。「やんばるの生き物を守る仕事を続けたい」と、4月からマングース防除事業に携わるほか、非常勤講師などで引き続き同校に関わる。

 「いいカリキュラムがあったが、生徒が集まらない状況だった」という辺土名高で、東さんが最初に取り組んだのは生き物博物館だった。14年の学園祭で生徒と共に、海や川の生き物を水槽で展示したところ好評を博し、校内で常設展示が始まった。

 「触れ合える動物が必要」と、17年から在来種の島ヤギと琉球犬各1頭を飼い始めた。ヤギはこれまでに21頭の子ヤギを産み、沖縄市の沖縄こどもの国など多数の施設や個人に譲渡された。生き物の世話はサイエンス部が担当し、放課後にはヤギの散歩をする姿が見られる。 環境科の授業では校外学習の機会を増やした。県内の海岸に大量の軽石が漂着した際は生徒の提案で海岸を訪れ、地域では珍しいカワハギの仲間とされる小魚の大群を発見した。

 東さんによると、赴任時の同校は生活指導に手がかかる生徒が多く「学校全体を落ち着かせることも必要だ」と考えた。東さんは生徒指導担当を希望し、生徒に寄り添う指導を心がけ、5年ほどで校内環境は改善した。

 7年目を迎えた20年、東さんは異動の打診を受けた。この時は周囲の求めなどもあり同校に残留できたが、今年2月に再び内示が出され、異動は確実となった。他の教員への負担を考えると「現在の取り組みを持続可能にするには専任で担当する人が必要だ」と考え、退職して自らの手でサポートする道を選んだ。

 高校での活動を生かした仕事に就く卒業生もいるといい「報告を聞くとやってきて良かったと思う」と笑顔を見せた。東さんによると、やんばる地域では自然に関わる分野で人手が不足する一方、待遇面などでの課題もあるという。

「環境科を出た子どもたちがやんばるで働ける場所をつくりたい」と、学校だけでなく地域のさらなる発展に意気込む。
(武井悠)