ブラジル・マトグロッソドスル州の州都カンポグランデの、中央市場フェイラ・セントラルで最初に沖縄そばを始めた「バッラカ・ダ・ニリア」。唯一豚だしを使うそば屋の、3代目店主は勝連タダシさん(30)だ。
フェイラで最初に沖縄そばを始めたのはタダシさんの祖父・勝連広さんと祖母・安子さん。1966年ごろ、自家製の野菜を売りに訪れる日本人移民を対象に、そばを売り出した。その後、日系人以外にも広まった。毎週定期的に開催される中央市場フェイラは絶好の普及の場となり、市場の前には3メートル超えの沖縄そばのモニュメントが建設され、そばは市の無形文化遺産になるほど愛されている。
そばは親から息子へ、孫へと受け継がれた。当時の製法を守り続け、現在は孫のタダシさんが3代目店主として、2020年3月から店を任されている。本場沖縄の沖縄そばは、だしをとるのに豚骨を使い、具材にソーキを乗せることが多い。タダシさんの店でも、だしは豚骨、具材は豚肉だ。トッピングは細切りにした卵焼きと細かく刻んだネギも入っている。
一方、他の店ではトッピングは同じだが、牛骨のだしに牛肉を乗せたそばを提供する。牛肉の生産が盛んで、ブラジル人にとって身近となっている。好みでしょうゆを加えるのもブラジル流で、スープの色が変わるまで入れるようだ。そして、スパゲティのようにフォークに麺を巻き付けて口に運ぶ。
現在、市内でそばを提供する店は100軒近くになる。フェイラは水・木・金・土の週4回、夕方から明け方まで開かれている。麺が見えないほど、どっさりと盛り付けがされた沖縄そばは、街の名物料理となるほど人気になった。ブラジルを訪れる際は、カンポグランデで根付く話題の沖縄そばを現地で味わってほしい。
(安里三奈美通信員)