わたし/エキノコックス 選外佳作・詩人の死/元澤一樹 光/吉岡幸一 熱り/あさとよしや<琉球詩壇・8月12日>


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香

わたし 

エキノコックス(大分県)


 

永久の未完成が完成なら
中学生は完全な存在だ

きみの目にわたしがどんな風に映ってるのか知りたくてわたしはきみの眼球をもらった。
メスで眼球を半分に切ったけど、透明なぶよぶよと液体がでてきただけだった。
わたし、きれい?と訊いてもきみは、いたい、いたいって穴ぽこの目を押さえるだけだった。
おーい、聴こえてる?
きみは泣いてた
無音だけが答えだった


西原裕美・選

寸評

内面の感覚を詩として表現している。短い詩だが、最初から最後までの展開が丁寧。


 

選外佳作1

詩人の死 

元澤一樹(糸満市)

 

詩人があふれて溺れそう
いや
今まさに溺れているのだ
言葉の海でも
時代の波でもない
死に損ないの俺自身が
詩人の足を引っ張って離さない
蹴り上げるようにもがく
時折、水面から顔を突き出して
ぎりぎりで呼吸している
生きるため
生きながらえてる
詩人にとってそれは
書き続けることではなく
今にも溺死してしまいそうなほど
脆弱な詩人の足に絡みついて
離さないでいること

詩人が死ぬとき
それは詩人が殺人犯と呼ばれ
そいつと一緒に詩人骨を箸でつまむとき
たった今、波の端っこで足を濡らした
子どもの無邪気さを横目に
詩人は、全ての抵抗をやめた


 

選外佳作2

吉岡幸一(福岡県)

 

まぶしい光が窓からコロコロ
カーテンの隙間からコロリン
入ってきて踊りだす

わたしの頬に色を差し
わたしの影の色を消す

窓を思いっきり開ければ
光が熱と一緒になって
これでもかと体当たりしてくる

燃えてしまいそうな観葉植物
水槽のグッピーは跳ね回り
クワガタは土に潜っていく

これが幸せなんだと
空の上から声がする
雲の上から言葉が落ちてくる

薄目を開けて空をみれば
小鳥の群れが飛んでいる
飛行機雲が一直線に空を切る

コロコロ転がる光を掬い取り
喉に流し込めば
身体の内側から溢れる光

影をも照らし輝かす


 

選外佳作3

熱り

あさとよしや(那覇市)

 

つるはしもって
しろいみちにたたずむ
とおいみちのさき
ちへいせんをみている そして

おれは冷まさないぞ ほとぼりを

さきいかをむしょむしゃたべながら
どこかでハッカのかなしいにおい
にわにでてほうほうひかる
ほたるをみているひとびと
まっくらよみにきみどりの
りゅうせんえがいてとびかって
やみのあわいがすきか もえろもっと
はげしく もっともっとめいめつしろ

りさいくるぎょうしゃがとらえていく
とらっくにつめこんでいく
にわでむじゃきに ほうほうひかる
ほたるはつぎつぎ かいしゅうされてゆく
なきものをむかえてしのぶきせつに
さいりようされる ほたるのひかり けれど

ぼろぼろのハギレのような帳が
とおいみちのさき ちへいせんを隠ぺいする
されど ひかりがひとすじ はかなはかなと
なつのおわりに ぽしぇっとのくちが
ひらいたりとじたりしながら やはりおれは

ぜったい冷まさないぞ ほとぼりを