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うるまの「感動」東京へ 現代版組踊「阿麻和利」20、21日公演


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 20万人を感動させた奇跡の舞台―。うるま市の中高生による現代版組踊「肝高(きむたか)の阿麻和利(あまわり)」は2000年の初公演以降、県内外・世界で多くの観客を動員してきた。始まりは与勝地域。子どもたちに自信や感動体験を与えるための舞台だった。「挑戦の舞台」はいつしかうるま市を代表する「愛される舞台」に変わる。20、21日、うるま市のシティープロモーション事業「感動産業特区」のアンバサダーとして「肝高の阿麻和利」の公演が東京都文京区の文京シビックホールで開催される。

東京公演に向け稽古に打ち込むメンバーら=7日、うるま市の勝連シビックセンター

 

出演する学生の声

 

阿麻和利役・福永勇飛也さん(17)

 「肝高の阿麻和利」は、友達に誘われて中学1年の時に参加した。最初は嫌々だった。先輩や周囲の人とふざけ合うのが楽しくて続けた。

 阿麻和利役は前任の先輩に声をかけられ、中3の時に引き受けた。演技経験がなく、不安が大きかった。自分らしくすることで自然な演技を心がけている。阿麻和利は王でありながら民と対等な関係を築く。いい意味で力を抜いて演じている。

 感動する瞬間は舞台上で観客から拍手もらった時。思いが伝わった、やってて良かったと感じる。大きな役をもらい、人の目に映るようになって礼儀も意識するようになった。

 演技中の自分は表情が豊かだ。楽しんで演じているところを見てほしい。東京公演はうるま市の感動の代表として行く。最大限力を発揮したい。

 

百十踏揚役・田原里桜さん(18)

 きょうだいが「肝高の阿麻和利」に入っていたこともあり、百十踏揚には物心つく前から憧れていた。中2で初めてオーディションを受けたが不合格。人見知りな性格のため人前歌うことに慣れていなかった。

 高2の時にようやく役をつかんだ。百十踏揚は意志が強く、優しくて理解のできる人物だ。自分の性格も踏まえておしとやかに演じている。表情をつけすぎず目線で伝えること、指先まで意識した、きれいな所作を見てほしい。

 百十踏揚の演技を通して自信がついた。特に演技中は同級生が普段とのギャップに驚くほどだ。自分がそうだったように、誰かの憧れの存在になれたらうれしい。「元気をもらえた」「上手だった」と声をもらうことがある。元気や勇気を与えられる光になりたい。

 

百十踏揚役・藤原聖さん(17)

 家族で舞台を見たことはあったが小6の時に百十踏揚にときめいた。父の反対を押し切り浦添市からうるま市へ引っ越してきた。最初の稽古からドキドキわくわくで、台本をもらった時は授業中も読んでいた。

 昨年初めて役をつかんだ。応援してくれる人のためにも、がむしゃらに頑張ろうと決めた。百十踏揚は歴史的には悲しい人物。その中でも幸せや喜びを感じていたはず。ささいなシーンでも幸せを表現している。百十踏揚が一人で歌うシーンがある。第一印象にもなる歌に注目してほしい。

 「肝高の阿麻和利」の活動を通して「どう自分らしさを出せるか」という自己表現について考えることが増えた。コロナ禍で思うように舞台ができず卒業した先輩もいる。感謝を忘れず肝高き心を届けたい。

 


「阿麻和利」とは

 阿麻和利は勝連城を居住地とする勝連10代目の按司(地方の支配者の称号)。天下統一を目指し重臣・護佐丸を倒した人物(護佐丸・阿麻和利の乱)。王府打倒へ動き出したが最後は王府軍によって滅ぼされる。多くの歴史書では時の琉球国王・尚泰久に逆らった「逆賊の阿麻和利」として記されている。

 しかし勝連の中では「英雄」として語り継がれる。圧政を敷き、酒におぼれた勝連9代目の茂知附(もちづき)按司を倒し、海外貿易によって勝連を繁栄させた。人々から慕われる「民草の王」であった。

 沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」の中では阿麻和利をたたえる歌も多く「肝高の阿麻和利」との言葉が登場する。現代版組踊「肝高の阿麻和利」は「逆賊」のイメージを覆す「肝高き」阿麻和利を描く。
 

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