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【記者解説】米軍PCB廃棄物 日本が処分、費用2200万円 米軍の責任放棄を追認


この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗
トリイ通信施設内で保管されているPCBを含む蛍光灯安定器(県への情報開示請求で本紙が入手した資料より)

米軍基地内で使用されていたポリ塩化ビフェニール(PCB)を含む機器を日本側が引き取って処分している実態が明らかになった。防衛省は米軍の責任放棄を追認し、税金を投じているにもかかわらず国民に十分説明していない。県内の基地内保管分の多くが米軍再編事業で見つかったものだが、日本側が引き取り、処分する明確な根拠や基準はない。引き取りの経緯が不透明だ。

PCB含有機器については本来の処分期間は過ぎており、保有や使用は違法状態に当たる。発見次第、すぐに処分する必要がある。それほどの危険物質が県民の生活圏と隣り合う基地内で保管されている。他にも米軍基地内にはPCB機器が残されている。

防衛局が保管しているPCB廃棄物は、米軍が持ち込んだとみられる海外製が多く、濃度が判明していないものも多い。日本の国内法で濃度不明の場合は高濃度PCB廃棄物とみなすことが定められており、国による全額出資の特殊会社「中間貯蔵・環境安全事業(JESCO)」で処分することになる。防衛省はJESCOと調整し、23年度中に処分する考えを示している。だが、事情は簡単ではない。

PCB廃棄物の処分場設置には住民らの抵抗感が強い。全国5カ所にJESCOの処理施設が造られているが、立地自治体はあらかじめ提示された処分量や稼働時期を踏まえて受け入れている。この処分計画量は国内での流通量や都道府県に各事業者が届け出た情報を踏まえて算出しており、届け出をせずに海外からも製品を持ち込んでいた米軍保有分は計上されていない。

このため、米軍保有分を日本側が引き取って処分を続けると、国がJESCO立地自治体に約束した処分量を超える可能性がある。稼働期間も決まっており、無尽蔵に処分できるわけではない。

基準や根拠さえない中、日本政府が米軍のPCB廃棄物を引き取り続ければ、基地を抱える沖縄や処理場を受け入れている地域に負担がかかる恐れがある。

(明真南斗)


処分費用2200万円 19~22年度 製造国不明多く

在沖米軍基地内で使用されていたポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物を、日本側が引き取って処分に要した費用は、2022年度までの4年間で2200万円に上ることが、沖縄防衛局への取材で分かった。引き取りや処分の基準が定まっておらず、なし崩し的に日本側の負担が増える恐れがある。

嘉手納基地では、提供施設整備で設置した日本製の低濃度PCB変圧器2基を22年度に処分しているが、嘉手納基地内の同様の変圧器は19年度に6基、20年度に1基が処分されていた。

4年間で処分金額が最も多かったのは19年度で1500万円だった。

米軍基地の返還後に確認されたPCB廃棄物を日本側で処理する「返還事案」として、19年度に牧港補給地区内のケーブル約21トン、角材160キロ、シート類320キロを低濃度廃棄物として処分した。20年度にも同地区内で確認された蛍光灯安定器26キロを高濃度廃棄物として処分。

21年度にはキャンプ瑞慶覧の施設技術部地区内倉庫地区の一部で確認された変圧器3基とケーブル約5トンを低濃度廃棄物として処分した。

このうち、20年度に処分した蛍光灯安定器は海外製だったが、その他のPCB廃棄物について製造国は確認できなかったという。

(知念征尚)