県系1世の音源も 移民115年史つなぐ絆 県立図書館がブラジルで企画展「先祖の経験を考える契機に」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
県立図書館がカンポグランデ県人会と共同で開催しているブラジル県系移民に関する企画展=12日、カンポグランデ市のショッピング・ボスケ・ドス・イペース(提供)

 県立図書館は、ブラジル県系移民に関する企画展「小説『ノロエステ鉄道』とブラジル・カンポグランデの沖縄県系人」を12日から、ブラジル・カンポグランデ市の大型商業施設内で開催している。同図書館による海外での企画展は初めて。カンポグランデ沖縄県人会の協力で実現した。9月末までの開催で、その後は別の商業施設や県人会館でも開催する予定。

 企画展は2021年、沖縄初の芥川賞作家・大城立裕さんの没後1年に合わせ、那覇市の県立図書館で初開催した。大城さんが県史料編集所長としてブラジルを訪れて県系1世にインタビューし、後に小説「ノロエステ鉄道」の創作につながった音源などを紹介した。

 2022年3月にはポルトガル語と英語版のウェブ展示を公開。今回は、同図書館がカンポグランデ市のそば祭りで県系移民のルーツ調査を実施することに合わせて実現した。

 カンポグランデ沖縄県人会のマルセル・新垣・安里会長は「この展示は、移民の歴史をたどる入り口となり、私たちの先祖の経験を理解し、敬意を抱く特別な機会を与えてくれる。カンポグランデと沖縄の絆を深めてくれるだろう」とコメントを寄せた。

 開会式ではハケウ・ソケンさん、ジュリアーナ・バルボーザさんの創作琉球舞踊も披露された。展示デザインとレイアウトは、デザイナーで恩納村安富祖出身の戦後ブラジル移民2世、ヒガ・サユリさんが担当。3章構成で26枚のパネルを展示している。1908年に初めて沖縄からブラジルへ移民した1人、大城カメさんの音声もQRコードで読み込んで聞ける。

 県立図書館の原裕昭さんは「最初に沖縄からブラジルに渡った移民から115年がたち、その子孫たちが1世の体験や思いを考えるきっかけになればと思う」と語った。
 (座波幸代)