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激戦地岩石の搬出を近く許可 糸満の鉱山開発で県が方針 農地転用し道路工事へ


この記事を書いた人 琉球新報社
鉱山に隣接した自然壕「シーガーアブ」の入り口=糸満市米須

 県農政経済課は21日、糸満市米須の鉱山開発に向け沖縄土石工業が出した農地転用の許可申請について「諸条件が整った」として、近日中に許可する方針を固めた。市民団体への説明で明らかにした。許可された場合、鉱山から琉球石灰岩を搬出できるようになる。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設では、政府が埋め立て土砂の採取予定地に本島南部を加えることを計画し、沖縄戦の激戦地で遺骨の混じった土砂が使用される可能性があるとして市民団体が反発している。市民らは沖縄戦の遺族らを対象とする公聴会の実施を求めた。

 玉城デニー知事は21日夜、記者団に対し「遺骨が混じるかもしれない土砂が使われることについては、われわれも大きな懸念を持っている。引き続き業者に協力を求めていく」と述べた。

 農地転用の許可申請は、鉱山から採掘した琉球石灰岩を搬出する搬出入道路の工事に必要な手続き。同課は、県の赤土流出防止条例や文化財保護法に基づく手続きについて所管課に確認していた。各課の所管条例などに照らして問題がないと判断し許可に踏み切る。申請した沖縄土石工業は「正式に許可が出ていない段階ではコメントできない」と話した。

 搬出入道路に隣接する自然壕シーガーアブについて、県は文化財との認識を示し、業者に測量調査を指示した。業者は7月に測量を実施した。県教育庁文化財課は「工事が遺跡を壊すものではない」と、影響はないとの見通しを示した。また、計画通りに工事が行われるかを確認するため、工事への立ち会いを求めている。

 市民団体らは、シーガーアブの文化財調査で測量調査の結果が確認されていないことや、工事に必要な赤土防止の届け出に不備があると指摘。所管課が複数にまたがるため、各課が同席して説明するよう求めた。

 玉城知事は「これまでも丁寧に県と業者とで協議し、報道を通じて県民にも取り組みを伝えてきた。引き続き住民には担当部局から丁寧な説明を続けていきたい」と話した。
 (福田修平、慶田城七瀬)