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甲子園挑戦へ特別支援学校の球児も硬式球 夢応援プロジェクト 全国から23人、都内高校と合同練習 与勝中・熊崎さん、攻守に手応え


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 【東京】知的障がいのある生徒たちに硬式野球でプレーする機会を提供し、甲子園挑戦をサポートする「甲子園夢プロジェクト」の合同練習会が12日、東京都立雪谷高校で行われた。関東を中心に三重県や大阪府、沖縄県など全国各地から特別支援学校の生徒23人が集まった。参加した生徒たちは、雪谷高校の野球部員たちと共に守備や打撃などの練習にはつらつと取り組んだ。

サードの守備位置につきノックを受ける与勝中の熊崎大琉さん(中央)=12日、東京都の雪谷高グラウンド

硬式球、戸惑いなく

 沖縄から参加した、うるま市立与勝中学校3年の熊崎大琉さん(14)は、昨年12月以来2度目の練習会となった。発達障がいの自閉症スペクトラム(ASD)と軽度の知的障がいのある大琉さん。この日を待ちわびたように元気よくグラウンドに飛び出すと、キャッチボールやバッティングなどの練習メニューを意欲的にこなした。

 中学では軟式野球でプレーした大琉さんにとって、この日は慣れない硬式球での練習となったが、ボールの違いに戸惑う様子もなく、日頃の練習の成果を発揮。シートノックではサードの守備位置につくと、軽快な動きで強い打球も難なく処理した。バッティング練習では力強いスイングから鋭い打球を連発し、周囲から「ナイスバッティング」の声が掛かった。
 

高校でも続けたい

 午前中から強い日差しが照り付ける中、給水タイムを挟みながら約2時間半、たっぷりと汗を流した大琉さん。練習後「バッティングが楽しかった。硬式ボールにもうまく対応できた」と充実の表情を見せた。練習で大琉さんとペアを組んだ雪谷高校の野球部員は「投げるのも、打つのもしっかりできていたし、うまいと感じた。真面目に野球を頑張っている様子が伝わってきた」と感想を述べた。

 大琉さんは最近、中学野球を引退した中学3年生を対象に硬式野球の場を提供する沖縄県ジュニア育成会の練習にも参加しているという。「たくさん練習して高校でも野球を続けたい」と意欲的に話した。
 

成功体験積み重ね

 練習会に同行した父親の泰司さん(57)は、のびのびプレーする大琉さんの姿に「本人は、軟式野球より硬式の方が合っていると感じているようで練習にも熱が入っている。練習したらできるようになったこともたくさんあって、そういった成功体験の積み重ねが成長につながっている」と目を細めた。

 プロジェクトの代表を務める玉川大学の阿部隆行准教授は「知的障がいがある子どもに硬式野球をやらせるのは危ないと思われるかもしれないが、障がいがなくてもスポーツでけがをすることはある。イメージにとらわれず、何かを一緒にやることで理解も進む」と話す。「沖縄でも、地元の特別支援学校の生徒たちを集めて高校の野球部員と一緒に野球教室をやってみたい」と青写真を描いている。

 (和田清首都圏通信員)

 

甲子園夢プロジェクト 東京都立青鳥(せいちょう)特別支援学校の久保田浩司教諭の「知的障がいがあっても硬式野球で甲子園が目指せる環境づくりを」との呼びかけで2021年に発足。特別支援学校などに通う生徒が好きな野球に伸び伸びと取り組み、甲子園出場への道を開くのが目的。今夏の全国高校野球西東京大会には、久保田監督率いる都立青鳥特別支援学校が松蔭大松蔭高、都立深沢高と連合チームを組んで初出場を果たした。昨夏は愛知県立豊川特別支援学校の林龍之介選手が5校連合チームの一員として愛知大会出場を果たしている。