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那覇空港を「飛び安里空港」に…議論浮上せず 愛称制定求めた陳情が県議会で廃案に 南風原町長「もっと世論盛り上げる」と挑戦続行


この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚
愛称制定の議論がある那覇空港

 南風原町が那覇空港の愛称制定を求めているが、議論は盛り上がらず、賛同は広がっていない。町は2020年に那覇空港の愛称を「飛び安里空港」に制定するよう県へ要請した。町議会も愛称制定を求める決議を全会一致で可決し、県議会に陳情を提出。だが、ことし7月の県議会6月定例会会期中の総務企画委員会で議論はなされず、事実上の廃案となる審議未了となった。赤嶺正之町長は引き続き要請を続ける意向だが、全県的な関心を高め、低調な議論をいかに盛り上げるかが課題となる。

 全国各地に97の空港があり、各空港の特色を出そうと愛称を制定する動きが全国で広まっている。

 南風原町には、町出身の安里周當と息子の周祥が、1903年に世界で初めて動力飛行を成功させたライト兄弟よりも1世紀以上前に人力飛行を成し遂げたとの伝承がある。町議会は20年6月、親子の通称「飛び安里」を那覇空港の愛称とするよう求める決議を全会一致で可決した。愛称制定により「町おこしの起爆剤になる」と期待を込めた。

 20年10月に出された県議会への陳情は、付託された総務企画委で審査の継続が続き、詳しい議論にはならないまま。

 総務企画委に所属する那覇市区選出のある県議は「そもそも那覇市民の理解を得られるとは思えない。那覇空港は昔、(旧軍の)小禄飛行場と呼ばれていた歴史があり、愛称には『小禄』を使ってほしいくらいだ」と話した。

 20年10月に県を訪ねて愛称制定を要請した赤嶺町長は「県議会で審議未了となったのは残念」と悔しがる。要請の際に県幹部から「愛称制定に向けた機運を高めてほしい」と言われたことを振り返り、「私としてはもっと世論を盛り上げ、再度県へ要請に行くことになると思う」と話した。

 国土交通省によると、愛称制定に関する法令はない。国管理の那覇空港でも愛称制定は可能。全国では自治体の関係機関が合意形成して決めている。県によると、国は「地域住民にとって身近な存在として、今後の幅広い利用促進や需要喚起が期待される愛称」などの条件を示している。

 愛称に郷土の偉人を用いるケースは、坂本龍馬を冠した高知空港の「高知龍馬空港」がある。そのほかにも鳥取県では漫画の作者の出身地であることから「鳥取砂丘コナン空港」(鳥取市)、「米子鬼太郎空港」(境港市)といったユニークな愛称も。県内でも新石垣空港が「南(ぱい)ぬ島石垣空港」と「南の島」を意味する八重山のしまくとぅばを使用して地域色を出している。飛び安里の伝承は沖縄市にも残っている。
 (梅田正覚)