バスケットボール男子日本代表の中心選手で日本人2人目のNBAプレイヤーである渡辺雄太(28)=香川出身=が、ワールドカップ(W杯)でチームをけん引している。チーム目標のパリ五輪出場権を獲得できなければ、代表引退を宣言している渡辺。ともに元実業団選手の父・英幸さん(64)と母・久美さん(61)は「昔から自分にプレッシャーをかけて有言実行してきた」と話す。沖縄アリーナでの躍進を「中国でのW杯、東京五輪で1勝もできなかった悔しさがある」と力の根源を推し量る。
渡辺は生まれた時からバスケに囲まれて育った。ゆりかごで寝るそばで両親はバスケをしており、久美さんは地元少年団のコーチをしていた。渡辺は幼稚園の頃から母のチームに入れてもらうよう頼み込み、小学1年で希望がかなった。風邪をひいた時もバスケをやりたがるほど熱中していたという。
香川・尽誠学園高では、2年連続で全国選抜準優勝の立役者に。英幸さんは「香川のミラクルと言われた」と振り返る。高3の春に米国留学の希望を家族に打ち明け、英幸さんは「勉強してないのに無理だ」とはねつけた。渡辺は「死ぬ気で勉強するから行かせてくれ」と懇願。最終的に留学を認め、「ここから先はお前が自分で道を切り開け」と送り出した。
バスケットの全米大学体育協会(NCAA)1部のジョージ・ワシントン大では、ナショナル・インビテーション・トーナメントで優勝に貢献するなど活躍した。両親は「精神的に本当にタフになった」と成長に目を見張る。大学では一切脇目もふらず、バスケと勉強漬けの毎日を送り、両親との約束を守った。努力が実り2018年、NBA入りを果たした。
今回のW杯について英幸さんは「素晴らしいチームメンバーと巡り会った」と納得の表情を見せる。27日のフィンランド戦、渡辺はともに中国W杯、東京五輪を戦ってきた馬場雄大との好守備で、エースのラウリー・マルカネンを封じ込めた。31日のベネズエラ戦で逆転の立役者となった比江島慎も長年ともに代表でプレーしてきた戦友だ。
英幸さんと久美さんは「こんなに会場が一体になった試合は人生で初めてだ。地響きのような応援だった」と沖縄アリーナでのどをからして応援してきた。2日のカボベルデ戦はパリ五輪出場権が懸かる大一番。両親とも「最後は満面の笑みで終えてほしい」とエールを送った。
(古川峻)