「はいたいコラム」 地域の課題はご当地限定商品


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 島んちゅのみなさん、はいたい~!青森へ行ってきました。厚手のコートに毛糸の帽子で新青森駅へ降り立つと、あれれ、どうしたことかぽかぽか陽気です。過ごしやすいとはいえ、雪国には雪がないと、津軽名物「地吹雪体験ツアー」ができませんね~。嬉(うれ)しいニュースの裏には別の課題がつきものです。新商品の開発もだいたい課題から生まれるんですよね。

 青森市港町。サメ加工一筋86年の田向商店さん。加工場は昭和の趣を残し、明かりは裸電球。10人の従業員が長靴にエプロンで忙しく働いています。山積みされた体長1メートルほどのシルバーグレーに光るサメを、職人さんが次々と解体していきます。これは「アブラツノザメ」。フカヒレもとりますが、身の味がよく、世界ではアメリカ、イギリス、カナダほかで漁獲されます。しっとりとしてくせがなく、地元では煮付けや照り焼き、また高級なすり身になるそうです。
 しかしアブラツノザメ(業界)には悩みがありました。サメのイメージです。それに食の嗜好(しこう)の変化で、若い人の魚離れは否めません。
 そこでサメ加工86年の田向さんは、弘前大学と共同でアブラツノザメの軟骨に含まれる成分プロテオグリカンの骨粗しょう症予防効果をつきとめ、サメ軟骨サプリの商品化に成功しました。さらには、枕崎で本場かつお節のカビつけを習得し、「さめの出汁」も売り出しました。見た目はかつお節そっくりのサメ節。驚くほど旨みがあっておいしい~。このままおつまみになります。わたしの中のサメのイメージは、ジョーズから一気に、美味(おい)しくて価値ある魚に変わりました。
 その日、青森での講演会場で、試しに「サメ肉食べたことある人~?」と聞くと、ほぼ全員が手を挙げました。消費が減っているとはいえ、青森には確かなサメ食文化が根づいているのです。
 旅人にとって食の魅力は、「味」だけではありません。その土地「限定」の文化、歴史、風土です。サメ料理も地元の宝だと思えば、郷土食に誇りが持てます。青森の魅力はりんごだけではありませ…と書こうとした矢先、講演会でお会いした藤崎町長からりんごとりんごジュースとりんごジャムが、金木の中谷さんからりんご1箱が届きました。う~んこの課題どう宝にするべきか~。
 (フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
・・・・・・・・・・・・・・・・
 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。