進学諦めないで 県の無料塾、大学合格続々 取り組み広がりに期待


この記事を書いた人 田盛 良一
合格を喜ぶ仲村涼菜さん(右)と知花有紗さん=6日、沖縄尚学院

 【沖縄】生活困窮世帯の高校生の進学を支援する県の「無料塾」=沖縄市=が昨年6月に始まり、既に推薦入試などで受講生の志望校合格が相次いでいる。前原高校3年の仲村涼菜さん(18)は琉球大学に、コザ高校3年の知花有紗さん(18)は沖縄国際大学に進学が決まった。指導した尚学院講師の山城司さんは「県内で特に困窮世帯が多いとされる中部地域で無料塾を開くことに意義がある」と語った。

 高校から推薦を受ける推薦入試や、大学側が求める人物像が基準となって合否が決まるAO入試は特別な対策が必要だという。2人は「無料塾がなければ、合格できなかったと思う」と口をそろえた。
 仲村さんはもともと進学を希望していたが、母子家庭の家計を考え「予備校に通うのは無理だろう」と諦めていた。学校の先生から無料塾の存在を聞き、迷わず受講を申し込んだ。家計を助けるためアルバイトを続けながら、一般科目の学習と推薦入試の対策を重ねた。来年から琉球大観光産業科学部産業経営学科に通う。「バイトを続けながら、経営学と語学の勉強を頑張りたい。楽しみだ」と目を輝かせる。将来の目標は従業員も働きやすい会社を起こすことだ。
 知花さんは新聞広告で無料塾を知り、受講を決めた。「無料でなければ塾に通うことはできなかった」と話した。九州大会まで進んだソフトボール部の活動を続けながら入試対策に励んだ。親が就職で苦しんだ経験から不安定な県内の雇用状況に問題意識を抱き、経済学科を選んだ。「沖縄経済を少しでも改善したい」と力を込めた。大学卒業後は高校教員になり、県内の人材を育てたいと考えている。
 無料塾は、県が2014年に「子育て総合支援モデル事業」として始め、那覇尚学院が運営を受託した。21人が受講し、進学率は約81%と高い実績を残した。本年度から沖縄市の沖縄尚学院でも開講し、中部地域の高校生も参加できるようになった。受講生13人のうち5人が志望校に合格している。
 講師の山城さんは「貧困は世代間で連鎖する。子どもの貧困は自己責任論で片付けてはいけない。行政が予算を配分することが重要だ。進学支援の取り組みが市町村にも広がってほしい」と語った。(明真南斗)
英文へ→Okinawa’s “Free Cram School” paving the way to dream schools