沖縄美ら島財団総合研究所と神戸大学大学院理学研究科は8日、世界自然遺産登録地の竹富町西表島のみに分布する絶滅危惧種「ハガクレナガミラン」として図鑑などで紹介されていた花の中に、日本国内で記録のなかった別の種が紛れていたことを解明し、新たに和名「イリオモテカヤラン」と命名したと発表した。今後、詳細な分布や生育環境などを調べ、国や県の絶滅危惧種として選定されるよう働き掛ける方針だ。日本植物分類学会が発行する国際研究誌「Acta Phytotaxonomica et Geobotanica(APG)」に同日付で掲載された。
ハガクレナガミランはラン科カヤラン属。種の保存法で指定された国内希少野生動植物種で、環境省のレッドリストでは最も高いランク絶滅危惧ⅠA類に指定される。
研究グループは、2007年に発見されて植物図鑑に掲載された個体などに、花の形態が違う種があることに気付いた。22年に見つかった個体が開花した際に形状やDNAの比較など詳細に検討、中国やマレーシアなどの大陸に分布する同じカヤラン属であることを解明した。大陸産とは異なる変種と認識されたことから新たな日本産種として「イリオモテカヤラン」の和名を付けた。両種とも湿度の高い山地の自然林で樹枝上に生え、形状やサイズが似ていることや、花がなかなか観察できないことなどが、これまで気付かれなかった要因とみている。
沖縄美ら島財団総合研究所総合研究所植物研究室の阿部篤志室長は「イリオモテカヤランは、世界自然遺産にも登録された西表島の、豊かな森に生育する貴重な野生植物として、自然林の環境とともに守っていくべき種だ」とコメントした。
(慶田城七瀬)