「はいたいコラム」 西洋野菜で農業を守る


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 島んちゅのみなさん、はいたい~!NHKの朝ドラ「あさが来た」が大好きでたまりません。幕末から明治・大正の激動の時代、概念さえなかった「銀行」を生み出すあささんと加野屋さんの柔軟さに学ぶことは多いですね。いつの時代もしなやかな人は強いですね。

 先日、埼玉県の農業を訪ねました。ネギ、サトイモ、コマツナの産出額日本一という大野菜産地の中、さいたま市が取り組む「さいたまヨーロッパ野菜研究会」の畑へお邪魔しました。まず目に飛び込んで来たのは、カーボロネロ!イタリア原産のいぼいぼ黒キャベツです。そしてリーキ!ポロネギとも呼ばれる地中海沿岸原産の極太ネギで、日本のネギよりまろやかで甘く、スープや煮物にするととろんとしておいしいそうです。
 教えてくれたのは、「さいたまヨーロッパ野菜研究会」会長の小沢祥記さん(37歳)。主な品目はお米とネギですが、3年前から若手生産者で会を作り、ヨーロッパ野菜の研究に励んでいます。
 さいたま市が西洋野菜に力を入れ始めたのにはわけがありました。もともとはコマツナの一大産地でしたが、近年、茨城県などとの産地間競争が厳しく、打開策を探していたそうです。そんな折、市内のイタリアンやフレンチのシェフから、輸入に頼っている西洋原産の野菜を地場産でと望む声があり、2013年から、シェフや種苗会社、卸、自治体とも連携してヨーロッパ野菜の生産、販売を始めました。今ではなんと、10件の若手生産者で年間約40種類を栽培し、埼玉県内1000軒、全国で120軒ものレストランに提供するようになりました。
 地場産が珍しい西洋ネギのリーキは、出荷時で1本300円!都内のデパートでは1本800円で売られるほどの希少価値だそうです。栽培技術などまだ課題があるとはいえ、チャレンジしてよかったですね~!
 農業とひとくちに言っても、作る品目は時代や周辺環境によって変わります。問題を憂うよりも大きく受け入れ、変化しながら先祖代々の土地を耕し続けるしなやかさを、若い生産者に学びました。攻めは最大の防御なり。家業を守ることと新しいことへの挑戦は、相反しませんものね。あささんがいたら、お家のためだす、ほな投資しまひょ言うてくれたでしょうね~。
(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。