日本哺乳類学会の創立100年を記念した公開シンポジウム「琉球諸島 その特異な成り立ちと生物多様性」が9日、那覇文化芸術劇場なはーとで開催された。琉球諸島は、奄美大島や徳之島、本島北部、西表島が世界自然遺産の登録地以外でも世界的に独特の生物相を持つとして、島々の環境や生き物の魅力を知ってもらおうと、地層から見た島々の環境変化や、絶滅危惧種のイリオモテヤマネコ、トゲネズミなどの最新の知見が紹介された。学会所属の研究者や一般参加者約300人が来場した。
東北大大学院理学研究科の井龍康文教授は、固有の生き物が多くすむ宮古島と沖縄島の間には約550万年前に「沖縄―宮古海台(OMSP)」が陸地として存在し、生き物が渡る中継地として機能したとの仮説を提唱し、「生物学からの情報も得て仮説を立てた。異分野との交流も大事だ」と話した。
兵庫県立大自然・環境科学研究所の太田英利所長は、与那国島にすむヨナグニオオフトミミズや大東諸島のオガサワラヤモリ、尖閣諸島のアホウドリなど各島で独自の進化を遂げている生き物を紹介した。その上で「島々の環境履歴や生物進化を解明する上で格好のフィールドで、そのまま自然史博物館と称されるべきかけがえのない存在だ」と述べた。
このほか北海道大学大学院理学研究院の黒岩麻里教授は、トゲネズミ属の性決定メカニズムで、オスの性別を決めるY染色体がなくてもオスになる仕組みを哺乳類で初めて発見したことを報告した。
北九州市立自然史・歴史博物館学芸員の中西希さんは、イリオモテヤマネコの個体識別による追跡調査で、メスが生まれた地域に定住し最高12歳まで生きることやオスには先住権があり、定住する個体と放浪する個体に分かれることなどを紹介した。
(慶田城七瀬)