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「開発地」のアリ、季節性の行動予測が困難に OIST研究、英学術誌に掲載


「開発地」のアリ、季節性の行動予測が困難に OIST研究、英学術誌に掲載 沖縄でよくみられるアミメアリ(OIST OKEON美ら森プロジェクト提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は10月27日、県内で森林が残る地域と開発された地域で沖縄のアリ群集の行動パターンの変化を調べたところ、開発地のアリは季節性が減り、行動予測が難しくなることが明らかになったと発表した。OISTとアイルランドの研究者らが共同で調査し、10月11日に英国の学術専門誌「英国王立協会紀要」に掲載された。

 アリなどの昆虫は一般的に、季節がはっきりしている環境では春と夏に活動的になり、冬は活動が鈍くなるという。アリは個体数が多いため、生き物の死がいを食べるほか種子や花粉を運搬するなど、生態系の中で重要な役割を担う。

 研究チームは2年間にわたり、本島各地にあるOISTが管理するモニタリングサイト24カ所に特殊なトラップを仕掛けて2週間ごとにアリを採集し、種類の同定や個体数を記録した。これらのデータを基に、アリの群集の経年変化を計算し、衛星画像を使って土地の開発との関係をモデル化した。

 その結果、森林が残る地域よりも、開発された地域のアリ群集の行動では経年変化が少なく、季節性も減少していた。

 OIST生物多様性・複雑性ユニットを率いるエヴァン・エコモノ教授は、「どの種が活動的かを予測することが難しくなる」と説明している。元OIST研究員で東北大のジェイミイ・キャス准教授は「人間の活動によって昆虫群集の正常な季節行動が乱されている可能性が示された。今後も引き続き調査していく必要がある」としている。

 (慶田城七瀬)