<南風>「脅威」はどこに


<南風>「脅威」はどこに
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 IMF(国際通貨基金)の予測によると、2023年の日本の名目GDP(国内総生産)がドイツに抜かれ、世界第4位に転落する。1位のアメリカ、2位の中国はともに人口規模や面積が日本よりもはるかに大きいが、ドイツはいずれも日本より規模が小さい。円安の影響でドルベースの数字が不利になるとはいえ、このニュースは衝撃的だ。

 日本のGDPが中国に追い越されたのは2010年だったから、13年にわたって維持し続けてきた第3位の座を明け渡すことになる。直近の状況をいえば、22年の中国のGDPは約18兆ドル、日本は4兆2千億ドルであり、その差は4倍以上に開いている。

 隣国の経済規模が拡大し巨大な購買力を持つマーケットが誕生するのは日本経済にとって極めて好ましい。だが近年は政治的問題や軍事費の増大という一面を捉え、中国を「脅威」と見なし経済交流にまで二の足を踏む動きもあるようだ。

 ただ、当の中国は日本との交流に極めて積極的である。特に中央政府が「ウィズコロナ」に転換して以降、年初から現在までに私の職場が受け入れただけでも北京、上海、天津、重慶、山東、安徽、湖南、江蘇、浙江、広東、広西、黒竜江、遼寧、吉林、河北、河南、内モンゴル、福建、海南、寧夏などから経済ミッションが日本に押し寄せ、これまでの交流停滞を取り戻すかのように経済協力を推進している。これも一面の事実だ。

 中国は改革開放政策が始動した1978年以降、歴代指導部の政策に多少の違いはあっても「発展こそが全ての問題を解決する鍵である」という認識では一致している。政府も民間も懸命だ。

 「失われた20年」に青年期を過ごした私。本当の「脅威」は中国ではなく、自分たちの中に存在している気がしてならない。

(泉川友樹、日本国際貿易促進協会業務部長)