「はいたいコラム」 「隣の芝生は青い」理由


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 島んちゅのみなさん、はいたい~!東京の桜は今が満開です。近所の砧(きぬた)公園へ花見ランに行ってきたのですが、見る景色見る景色あまりにも美しく、足を止めては写真を撮っていたので、結局ぜんぜん走れませんでした~。

 しかし近所の桜にこんなに感動するとは思いませんでした。
 実はその3日前、出張していた福島で、「福島には「花見山」と「三春の滝桜」という桜の名所があって、それはそれはすばらしい」という話を聞いたのですが、時期的に見られなかったので、何かとても大事なものを見逃し、損をしたような気持ちでいたのです。なのに家からわずか2キロの桜がこんなに見事でラッキー!得した気分。桃源郷は、誰の地元にもあったのです。名所の桜を見に行く旅はもちろんすてきですが、行けないことを悔やむ必要はありませんよね。それよりも身近な物に目を向ける大切さを近所の桜が教えてくれました。自分の地元を愛することは、自分自身を大切にすることにつながります。
 東北を中心に地域の農山漁村を訪ね歩く民俗研究家で、「地元学」を提唱する結城登美雄さんはこれを、「ないものねだりよりあるもの探し」、また「遠隔対称性からの脱却」と言います。「遠隔対称性」とは?簡単に言うと、「隣の芝生は青い」と感じる人間の心理だそうです。隣の芝生のみならず、隣の方が高収入だ、隣の奥さんは美人だ、隣の子どもは成績優秀だ…と羨(うらや)んでも仕方ありません。しかも、現実はどんな家にも問題はあるものです。
 人は、とかくないものねだりをしがちです。田舎は都会に、都会は田舎に憧れがちです。以前ニュース取材で、日本一早い桜を求めて1月末の名護へ桜を訪ねたことがありますが、まだ寒い1月に桜の咲く南国!これぞまさに、都会の人が沖縄に憧れる例です。地元の視点だけだと、価値は見つけにくいですが、こうした外からの視点は、地域振興にも役立ちそうです。
 人は遠いものに憧れる。覚えておくとよいですね。遠いものへの憧れの最たる例は、異性です。朝ドラ「あさが来た」で、娘婿の啓介が千代に惹(ひ)かれた理由は、なんと関西弁だったというではありませんか。お国なまりは魅力的なんですねえ~。そしてわたしの遠い憧れは、ああ、行かないで新次郎さ~~ん。
 (フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。