【マニラ共同】戦後フィリピンに残され、訪日を切望してきた県系2世のアカヒジ・サムエルさん(81)とカナシロ・ロサさん(80)が14日、父の親族と初めて対面するため沖縄県に向けてマニラを出発した。2人の父は戦前に沖縄からフィリピンに渡った日本人。福岡経由の空路で那覇空港に入り、親族に出迎えられる予定だ。
空港の搭乗口に着いた2人は笑顔を見せた。アカヒジさんは出国手続きで問題が起きないか心配していたといい「やっと日本を訪問し、父の親族に会える。とてもうれしい」と話した。カナシロさんも「興奮している。とても幸せだ」と語った。
支援団体「フィリピン日系人リーガルサポートセンター」(東京)などがクラウドファンディングで訪日資金を集め、2人の写真や情報を公開したところ、戦後78年を経て、それぞれの親族とみられる人々が見つかった。
2人の母はフィリピン人。父系の血統主義を採用する出生時の法律により日本国籍が付与されるはずだが、国籍回復に至っていない。
アカヒジさんはパスポートも取得できなかったが、フィリピン政府が居住地のコロン島に職員を派遣して面接し、無国籍と認定して訪日を後押し。13日に特別な渡航書類を与えた。マニラの空港では日本大使館の公使が付き添い、スムーズに出国できた。
2人は14~19日に沖縄に滞在。16日にそれぞれ親族のものとみられる墓を訪れ、一族と交流する計画だ。
同センターは、2人の日本国籍回復に向けて沖縄で親族の証言を集めるほか、DNA型鑑定の可能性も検討している。