「先住民族」撤回要求 琉球王国の認識に違い


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 国連が沖縄の人々を日本の「先住民族」と認識していることに対し、外務省が否定しているのは、歴史認識の違いによるものが大きい。それは1879年の琉球併合(「琉球処分」)まで琉球王国が独立王国として存在していたかどうかへの評価に深く関わっている。

 国連が規定する「先住民族」は、他者によって土地を奪われた、もともとその土地に住んでいた人々を指す。血統や言語といった人種や民族的同一性や違いも指標にはなるが、最も重要なポイントは、そこの土地はそもそも誰のものだったかという「土地の権利」だ。
 国連が沖縄の人々を「先住民族」と認めたのは(1)琉球王国が1850年代に米国、フランス、オランダと修好条約を結び、国際法上の主体=主権国家として存在していた(2)79年に日本によって併合され沖縄県が設置された(3)その後日本に支配され差別の対象とされた―主にこの3点を事実として認定したからだ。
 一方、日本政府側は琉球王国が国際法上の主体としての独立国家だったかどうかについて「『琉球王国』をめぐる当時の状況が必ずしも明らかでなく、確定的なことを述べるのは困難」という判断を避ける答弁を繰り返してきた。つまり公式には琉球王国の存在を確定的なものとして認めていない。
 ただ、今回の国会答弁のように日本の先住民族は「アイヌの人々以外にいない」ということであれば、少なくとも1879年以前、琉球人は存在せず、琉球王国の国民は日本人だったことになる。琉球王国の存在を認めた場合、先住民族論に最も重要な根拠を与えることもあり、判断を避けているとみられる。
 2007年に国連で採択された先住民族権利宣言は、先住民族の合意がない限り先住民族の土地を軍事に利用することを禁じている。日本政府が沖縄の人々を先住民族として認めると、日本政府は米軍基地問題などこれまでの沖縄政策で多くの「不正」を是正せざるを得なくなることも、認めたくない理由の一つだろう。(新垣毅)