琉球大で観光を学ぶ学生たちが、多機能携帯電話(スマートフォン)で琉球王国にまつわる世界遺産群を紹介するコンテンツを制作した。衛星利用測位システム(GPS)の位置情報を活用し、あらかじめ設定された場所に近づくと自動で音声案内が流れるのが特徴だ。日本語のほか、英語や中国語にも翻訳されており、増加する外国人観光客の歴史や文化体験につながると期待を集めている。
制作したのは2015年度に琉大観光産業科学部に所属した2~4年生25人。スマホ向け観光音声ガイド「SkyDesk Media Trek」を提供する富士ゼロックスから協力依頼を受け、アプリ内コンテンツの一つとして提供している。
学生たちは昨年7月から複数のチームに分かれ、県内9カ所の世界遺産を取材した。首里城ではモノレール首里駅を降りたところから案内ポイントを設定。隣接する玉陵(たまうどぅん)や金城町の石畳、大アカギなども取り入れ、街中を歩いて楽しめるよう工夫した。
勝連城跡では地域住民が薦める絶景ポイントや、勝連城跡を拠点に活躍した阿麻和利の生涯を描いた現代版組踊「肝高の阿麻和利」の情報も盛り込んだ。勝連城跡の取材を担った宮城玲奈さん(4年)は「阿麻和利が悪役として描かれた組踊『二童敵討』と見比べるのも面白いと思う」と語った。
説明文を作る中で「自分たちも初めて行き、知ることも多かった」と話す学生たち。宮城さんは「情報を盛り込み過ぎてもいけない。どこまで伝えるか観光客の立場になって考えるいいきっかけになった」と振り返った。山里真由美さん、屋宜志保さん(同)は「説明を聞くことで沖縄の遺産の魅力を知り、興味を持ってもらえると思う」と利用の広がりに期待を込めた。
学生を指導した波多野想、越智正樹両准教授は「観光客の目線から盛り込むコンテンツを考えることは、観光を学ぶ学生にとって有意義なことだ。企業が考える社会的狙い、学生がやりたいこと、観光客が求めることの三つを意識し、バランスを取る中で学生たちも成長したと思う。この経験を将来生かしてほしい」と語った。