
【東京】23日午前、米軍属女性死体遺棄事件への抗議・要請のため上京した翁長雄志知事は、口を固く結び、険しい表情で官邸に入った。握手はせずに安倍晋三首相、菅義偉官房長官と向き合ったが、報道陣に公開された冒頭の約1分間、両者ともに一言も言葉を交わすことはなかった。翁長知事は毅然(きぜん)と前を見据え、首相や官房長官の方を見ることすらなかった。
「日米地位協定の下では日本国の独立は神話であると思いませんか」。首相や官房長官との会談で翁長知事はこう強い言葉で語り掛けた。この日、知事は記者団にも終始冷静な受け答えだったが、日米地位協定の改定やオバマ米大統領との会談への働き掛けなど、再発防止に向けた具体的な「結果」を出すよう政府に要求。感情は抑えつつも、表情には再び起こってしまった米軍関係者による事件に対し、それを防ぐ手だてを示さない日本政府への憤りがにじんでいた。
一方、首相らへの要請後に開かれた沖縄振興審議会は、事件を受けて委員らによる黙とうから始まった。今後の沖縄振興の方向性について議論する場だが、委員からは事件を念頭に「性犯罪においては女性が絶対的な弱者。官民一体の取り組みが必要ではないか」との提言もなされた。事件の衝撃や波紋が多方面に広がっていることを印象付けた。
審議会の終了後、翁長知事は「日米地位協定の特権的な状況があり、そこで働いている軍人・軍属が大変、ある意味で占領意識を持ちながら県民を見ているところも大きい」と述べ、地位協定改定に向けて日米両政府に働き掛ける決意を語った。
英文へ→Onaga asks, “Do you not think that under the U.S.-Japan Status of Forces Agreement, Japan’s independence is a myth?”