糸満に「世界一小さな現代美術館」!?【島ネタCHOSA班】


糸満に「世界一小さな現代美術館」!?【島ネタCHOSA班】 赤瓦屋根の母屋。県内外や海外からも来館者が来るそう
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現代アート好きな知人が「世界一小さな現代美術館」に行き、有意義な時間を過ごしたそうです。どんなところなのかもっと知りたいです。ぜひ調べてください。

 (浦添市 モマリザ)

美術館の名称は「キャンプタルガニー アーティスティックファーム」。調査員も気になっていた場所です! さっそく調査開始です。

国内外の作品を展示

糸満市米須の住宅地にある美術館の門を開けると館主の大田和人さん(77)と愛犬のクロチェ(18)が出迎えてくれました。500坪の敷地内にある木造建築の母屋とコンクリートの展示室、渡り廊下、芝生の庭園を使ってアートが展示されています。彫刻家の丸山映さんや上條文穂さん、映画監督の高嶺剛さん、京都在住で米国出身の木版画家のリチャード・スタイナーさん、アメリカを代表する陶芸家で、現代陶芸の”クイーン“とも称される県系2世のトシコ・タカエズさん、県出身の芸術家・真喜志勉さんなど、約150点が並びます。

和室に展示されているトシコ・タカエズさんの作品。アメリカの自宅を訪ねた時に譲ってもらったといいます

美術館が開館したのは2005年。木造建築の母屋は、叔父から引き継いだ医院の2階部分を移築したものだそうです。大学時代に幼なじみの高嶺剛監督と一緒に映画を作るなど、もともと映像には関わりのあった大田さん。那覇市職員時代、「パレットくもじ」に出向し屋外彫刻展「街と彫刻展」などに携わるうちに、彫刻などにも造詣が深くなっていったようです。出展作品などを個人的に買い取ったり、作家や美術館関係者と交流を重ねていったりするうちに、コレクションが増えていき、ここを美術館にすることにしました。

反戦の思いを込めた展示室

赤い壁が特徴のコンクリートの展示室は2005年に建築

コンクリート造の展示室は赤い壁が印象的です。「赤は戦争犠牲者の血の色。戦争を決して忘れてはいけない、おろかな戦争は二度とやってはいけないという思いを込めた」と話してくれました。

「居留民・主」である大田和人さんの名刺には「カジトゥー・バルトロメオ・タルガニー」という名前も併記されています。熊本出身で小学5年生から両親の生まれ故郷の沖縄に家族で引き揚げてきたという大田さん。「カジトゥー」は沖縄に来てすぐにできた友だちが「かずと」と発音できずそう呼んでいたことから。「バルトロメオ」はカトリックの修道院で洗礼を受けたときの洗礼名。「タルガニー」は沖縄芝居の滑稽な登場人物の名前だそうです。「たまたま地球のここに居留しているから『居留民』」と言う大田さん。「キャンプ タルガニー」はタルガニーのキャンプ地なのです。

那覇で暮らす大田さんにとっては隠れ家だといい、気が向いたら開館しているそう。エアコンや照明なしで作品を見られるよう設計者が風通しや採光の良い造りにしてくれたため、心地よい空間になっています。自然と調和した美術館で、充実した時を過ごした調査員。平和であるからこそ芸術を楽しめることに改めて感謝しながら帰路についたのでした。


キャンプ タルガニー
アーティスティック ファーム
糸満市米須304番地
TEL 090-5380-0055(要事前予約)

愛犬・クロチェ

(2024年3月7日 週刊レキオ掲載)