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電力価格高騰、地震発生… 「活用容認」「脱原発」揺れる判断 東日本大震災から13年、地方紙20紙合同アンケート②原発政策


電力価格高騰、地震発生… 「活用容認」「脱原発」揺れる判断 東日本大震災から13年、地方紙20紙合同アンケート②原発政策 処理水の海洋放出が始まった東京電力福島第1原発=2023年8月24日
この記事を書いた人 Avatar photo 與那嶺 松一郎

 琉球新報「りゅうちゃんねる」など読者とつながる報道に取り組む全国20の地方紙による2024年の合同アンケートで、今後の原発政策のあり方について聞いた。選択肢は21~23年の3年間と同じで、23年までは物価高などを背景に原発活用を容認する回答が増えていたが、減少に転じた。東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出後、福島産品を購入することについて聞くと「気にしない」との声が多かった。

 24年は「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」が最多の31・6%で、「すぐにでも全国的に廃炉とすべきだ」を加えた「脱原発」層は計44・1%。一方、「運転延長は控え、基数を減らしながら活用」を含む原発活用を容認する回答は計48・0%だった。参考値として23年の値を比較すると、脱原発は8・4ポイント増え、容認は8・6ポイント減った。

 23年はロシアのウクライナ侵攻などに伴うエネルギー価格の高騰を背景に、原発容認が増加した。24年は1月に能登半島地震が発生。今回のアンケートでは福島第1原発事故を想起したという声が少なくなく、脱原発の意見が増えた一因とみられる。

 「分からない」はこれまでで最多の7・9%。原発を取り巻く環境がめまぐるしく変化し、活用の是非について結論を出しづらくなっている傾向もにじんだ。

 今回の合同アンケートで、沖縄の読者は35人が回答した。今後の原発政策のあり方について「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」が37・1%(13人)と最も多く、「すぐにでも全国的に廃炉とすべきだ」14・3%(5人)と合わせた「脱原発」の回答は51・4%と半数を超えた。全国の調査と比べ、「脱原発」層の割合が7・3ポイント高かった。

 昨夏に始まった福島第1原発の処理水の海洋放出に関連し、福島県の1次産品購入についても質問した。

 「あまり気にならない」「全く気にならない」の合計が51・2%で半数を超え、「とても気になる」「少し気になる」を合わせた33・5%を上回った。ただ、地元福島県では「気にならない」の合計が69・0%に達した一方、例えば福岡県では44・8%にとどまるなど、地域差がみられた。海洋放出の前に実施した昨年のアンケートでは、放出への賛否は反対が賛成を少し上回り、ほぼ拮抗(きっこう)していた。

 アンケートは各紙が2月、LINEや紙面などで呼びかけ、47都道府県と海外から計4681件の回答があった。

識者の視点
勝田忠広・明治大教授 (原子力政策)

本来は長期的な一貫性が必要な原子力政策で、エネルギー価格の高騰や事故への不安で国民は振り回されている。それは政府が十分な説明を怠ってきた結果ではないか。民主党政権時代、原子力政策について国民に聞く意見聴取会が各地であったが、そのような取り組みを続けないと民意がぶれやすくなるのは避けられない。福島原発の処理水でも「気にならない」が多かったが、問題があれば一気に懸念は増すはずで、原発政策と同様に民意は不安定な状態のままだろう。

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