有料

新港湾計画に与那国町長「防衛費43兆円の奪い合い」 町が比川地区で住民説明会 環境、軍事、振興…賛否割れる地域の苦悩


新港湾計画に与那国町長「防衛費43兆円の奪い合い」 町が比川地区で住民説明会 環境、軍事、振興…賛否割れる地域の苦悩 新港湾整備計画の説明会に参加する住民=28日、与那国町の比川自治公民館
この記事を書いた人 Avatar photo 照屋 大哲

 【与那国】沖縄県与那国町が国に整備を求めている比川地区の新港湾建設計画について、糸数健一町長は28日、比川自治公民館で、住民説明会を開いた。比川の定期総会前に実施し、約40人が参加した。冒頭以外非公開。町長は「(国の2023年度から5年間の防衛費総額)43兆円の争奪戦が始まっている」と述べ、改めて港湾の必要性について理解を求めた。住民からは米軍使用や自然環境への懸念、島の発展のために必要だなど賛否の意見が上がった。

 糸数町長は「国が整備してあげましょうと言っている時にやらないと。今が千載一遇のチャンス。ワンチャンス、今しかない」と整備に前向きな考えを示した。

 ある住民は「いつか米軍が来て軍港として使われる懸念がある」と質問。町長は「悩ましい問題。地政学的に、この島は要衝にある」として、不安定な国際情勢に触れつつ「43兆円の争奪戦が始まっている。『八重山は一つ』と言いながら、ぬけがけで、予算の奪い合い。(予算の)おいしい所は石垣市や宮古島市にみんな持っていかれている」と国の予算配分に不満をにじませた。

 新港が湿地帯・樽舞(たるまい)湿原への建設が計画されていることを受け、「樽舞の自然の価値を見直してほしい」と自然保護を求める住民もいた。「町民の声を聞いていない」「(新港が)できる前に阻止したい。島に余計なものはいらない」と町長に強く迫る声もあった。

 一方、「港は大賛成。自然があなた方をどう食わすのか。前向きな気持ちでやっていかないと比川は発展しない」と整備に賛意を示す住民もいた。

 比川自治公民館の崎枝和成館長は29日、琉球新報の取材に応じ「このままでは島が空中分解する。これまで平和にやってきた島なのに、この件(新港建設)で壊れる。賛否が割れ、地域の祭事ができなくならないか心配だ」と嘆いた。住民分断に加え、新港が、自衛隊や海上保安庁の利用円滑化を前提に、政府が特定の空港や港湾を優先的に整備する「特定利用空港・港湾」の候補地となっていることを受け、「苦しい…。国はこんな小さな島にこんなことを押しつけて」と吐露した。

(照屋大哲)