組踊を取り入れた漫才!?【島ネタCHOSA班】


組踊を取り入れた漫才!?【島ネタCHOSA班】 (左から)組踊立方・嘉数道彦さん、「オリオンリーグ」剛くん・玉代勢直さん
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 「漫才と組踊のコラボライブがある」とお笑いファンの知人から聞きました。珍しいライブなので調べてください。

(那覇市 漫才で乾杯)

漫才と組踊!?どう結び付くのか想像できません。「組踊漫才」というライブを過去3回開催した3人、組踊立方・県立芸術大学准教授の嘉数道彦さんと、よしもと沖縄所属の漫才コンビ「オリオンリーグ」の玉代勢直さん・剛くんに調査しました。

「お笑いと伝統芸能の観客はかぶっていないと思い、伝統芸能が好きな方に漫才を見てもらえたら盛り上がりそうだと考えました。僕は三線を弾くので漫才とのコラボを先生に相談したのですが、難しいと言われてしまったんですよ」と玉代勢さん。

「中高の同級生だった嘉数道彦が、組踊の立方として活躍中です。新しい取り組みはどうかと思い連絡したら、協力すると即答してくれました」と剛くんはうれしそう。学生時代からの友人である剛くんと嘉数さんは気心の知れた間柄。現在は伝統芸能の第一線で活躍する嘉数さんですが、実は過去に剛くんとコンビを組んでいたほどお笑い愛も深いのだそう。そこでオリオンリーグに嘉数さんを加え、3人でライブを計画。玉代勢さんの台本と構成の元で組踊漫才が完成し、お披露目してきたそうです。鑑賞者の開拓のために新たな挑戦が必要だと考える嘉数さんは、「大切にしているのは、組踊の伝統技法をしっかり受け継ぐこと。そこは怠らずにやっていこうと念じています」とほほ笑んでいました。

ルールやキャラを知る

「組踊は知れば知るほど面白く魅力がある」と感じる玉代勢さんと剛くん。「失恋したらショックで立ち直れない男性が多いなど、キャラクターの特徴を知ると楽しい」(剛くん)、「許されない恋に落ちた男女が密会する場面で、笛と琴の音色でやり取りする」(玉代勢さん)など学ぶ中、「でも音を出すと、会っているのがバレますよね」とツッコミを入れる玉代勢さん。

嘉数さんが「琴を弾き笛を吹く場面は沖縄芝居にも出てきます。音が出るとバレてしまうリアルな感覚は気にせず、音楽を楽しむシーンです。男女の純愛を表現する音楽は、演奏家の聞かせどころであり感動シーン。演目の背景や琉球王国時代の観客をイメージしながら鑑賞することで、受け取り方が変わってくるはずですよ」と解説。そんな3人の会話を聞き、古典芸能は理解が難しいと思いがちだった調査員はハッとしました。想像力をちょっと働かせるだけで、当時の人々の思いや琉球王国のプライドを感じることができると思えたのです。

公演の様子

「中国人に向けた宮廷芸能の組踊は難しくて敷居が高い。なので庶民が楽しむ沖縄芝居が誕生しますが、先輩たちは組踊を絶やしてはいけないと稽古を続けました。人気がないからといってやめることはせず、手も加えずに伝統を守ってきたんです。かなりの情熱ですよね」(嘉数さん)。

漫才も組踊も好きに

上演305年の歴史を誇る組踊の奥深さを、現代の漫才に取り入れる「組踊漫才」。「組踊好きな方に漫才も好きになってもらいたくて立ち上げたイベントです。ぜひ見に来てください」(玉勢代さん)、「組踊の楽しさをお笑いで伝えています。若い方たちも広め笑っていただきたいです」(剛くん)、「組踊の継承に尽くしながら発展と普及に努めます。お笑いが好きな方に組踊を知っていただきたいです」(嘉数さん)。「来月は見に行こう」と楽しみにしている調査員でした。


第四回「組踊漫才~女物狂編~」
日時:6月27日(木)開場19:15 開演19:30
会場:壺屋演劇場かさね(那覇市壺屋)
チケット:前売り・当日ともに2000円
出演:オリオンリーグ、嘉数道彦
問い合わせ:(株)よしもとエンタテインメント沖縄
TEL 098-861-5141
※チケットはよしもと「FANY」チケット、オリオンリーグX
剛くん
 https://twitter.com/horikawa_go
玉代勢さん
 https://twitter.com/tamayose_or

(2024年5月2日 週刊レキオ掲載)