「絶対に投票に行きます」。大学構内の木陰で友人らと勉強に励みながら、記者の質問に声を弾ませるのは、琉球大学1年の女子学生(18)=宜野湾市。名護市の出身で、米軍普天間飛行場の辺野古移設の是非が問われた2014年1月の名護市長選の際、高校のクラスメートと辺野古移設の是非について激論した経験がある。「これで国に意見が言える」。女子学生は手にした1票に喜ぶ。
女子学生が高校2年の時、名護市長選は移設反対の現職と条件付き容認の新人が戦う熱い選挙戦になった。クラスでも移設や候補で賛否が分かれ、休み時間ごとに論戦が交わされた。「授業も手に付かないくらいにみんな市長選の結果を気にしていた。基地を移設するかどうかここで決まる、変わるかもしれないという選挙だったから」。だが、自分の意見を選挙に反映できないもどかしさがあった。選挙権を得た今、国政を担う政治家に望むことはただ一つ。「地元が対立しない政治をしてほしい」
改正公選法の施行で、10日投開票の参議院選挙から、18~19歳の若者たちが初めて票を投じる。そんな彼・彼女たちの本音を知ろうと、記者は大学を中心に、若者たちの集まる場所を歩き尋ねた。
「え、投票日っていつでしたっけ。10日?」。午前中の授業が終わり、昼食を取ろうと校舎を飛び出した琉大1年の女子学生(19)は逆に記者に問い掛けた。「その日は新歓(新入生歓迎会)だったんじゃん?」。隣の友人に言われて少し悩み、「用事があって行けません」と答えた。「政治は身近ではない」としながらも、「子どもの貧困とか、待機児童が多いことが気になる」と話した。
沖国大では若者が企画した候補者質問会が開かれていた。候補者を知るために参加した幸地ルシアさん(18)=宜野湾市=は「何も考えずに投票していたら怖い。ひどい結果になる」と警戒する。質問会では、ブラックバイトや奨学金制度についても候補者の話を聞いた。「投票に行って意思表示をしたい。しっかり勉強して誰に入れるか決めたい」と意気込んだ。
歩いてみると、政治的無関心が多いとされる若い世代でも社会に対し要望を持つ人が多かった。
社会への要望と政治や投票に結び付きにくいのは、現実に即していない主権者教育が影響していると、専修大学の岡田憲治教授(政治学)は指摘する。「立派な有権者像、政治家像を求めすぎているから、有権者は現実との乖離(かいり)に心が疲れてしまう」と指摘。「『清き一票を』と呼び掛けるより、明日の生活に密接に関わるという実感が必要だ」と話した。(’16参院選取材班)
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10日投開票の参議院選挙を前に、新しく政治参加する若者や待機児童問題に悩む母親、基地問題や県経済など課題とされる現場を記者が歩いた。