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【全文】辺野古住民に「原告適格」 抗告訴訟 福岡高裁那覇支部 判決内容


【全文】辺野古住民に「原告適格」 抗告訴訟 福岡高裁那覇支部 判決内容 福岡高裁那覇支部(資料写真)
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 名護市辺野古の新基地建設工事で、県による埋め立て承認の撤回を取り消した国土交通相の裁決が違法だとして、辺野古周辺に住む市民4人が国に裁決の取り消しを求めた抗告訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は15日、「原告適格がない」として原告の訴えを却下した那覇地裁の判決を破棄した。原告適格を認めた市民の訴えは「適法」とし、審理を一審の那覇地裁に差し戻すとした。判決全文は次の通り。

令和6年5月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和4年(行コ) 第7号 公有水面埋立撤回処分に対し国土交通大臣がなした裁決の取消請求控訴事件(原審・那覇地方裁判所平成31年(行ウ)第8号)

口頭弁論終結日 令和6年1月16日

判       決

主       文

1 原判決を取り消す。

2 本件を那覇地方裁判所に差し戻す。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 沖縄県知事職務代理者から権限の委任を受けた沖縄県副知事が平成30年8月31日付けでした公有水面の埋立ての承認の取消処分(沖縄県達土第125号・同農第646号)を国土交通大臣が平成31年4月5日付けで取り消した裁決(国水政第13号)を取り消す。

第2 事案の概要等(以下、略称については原判決のとおり。ただし、原判決中、「原告」(「原告適格」の一部ないし原告適格一般に関するものとして記載されたものを除く。)を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」と、「当庁」及び「当裁判所」をいずれも「那覇地方裁判所」と、「裁判長」を「原審の裁判長」と、「別紙」を「原判決別紙」とそれぞれ読み替える。)

1 沖縄防衛局は、沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市内に所在する辺野古崎地区及びこれに隣接する本件埋立海域(原判決別紙2の図面のうち赤線で囲まれた部分にある水域)に設置するための公有水面の埋立て(本件埋立事業)につき同県知事から公有水面埋立法42条1項の承認(本件埋立承認)を受けていたが、事後に判明した事情等を理由として本件埋立承認を取り消す旨の処分(本件撤回処分)がされたことから、これを不服として国土交通大臣(裁決行政庁)に対し行政不服審査法に基づく審査請求(本件審査請求)をしたところ、国土交通大臣は、本件撤回処分を取り消す旨の裁決(本件裁決)をした。

  本件は、本件埋立海域の周辺に居住する住民であると主張する控訴人らが、国土交通大臣の所属する被控訴人を相手方として、本件裁決の取消しを求めた事案である。

原審が控訴人らの訴えをいずれも却下したところ、これを不服として控訴人らが控訴した。

2 関連法令等の定め、前提事実並びに争点及びこれに対する当事者の主張は、次のとおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」第2(以下、当審による訂正後のものを「原判決第2」という。)及び第3(以下、当審による訂正後のものを「原判決第3」という。)のとおりであるから、これを引用する。

(1) 原判決3頁15行目の「提出した」を「その添付書類(環境保全に関し講じる措置を記載した図書を含む。)とともに提出した」に、同行目の「乙3」を「乙1~3」にそれぞれ改め、同頁17行目の「オーバーラン長」の次に「(滑走路両端に各300m)」を加え、同18行目の「である」を「であり、各滑走路の幅はいずれも30mである」に改める。

(2) 原判決3頁22行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。

「沖縄防衛局長は、本件承認申請に先立ち、環境影響評価法及び沖縄県環境影響評価条例に基づいて環境影響評価書を作成し、平成23年12月及び同24年1月、これを仲井眞元知事に送付するとともに、同年12月、補正後の環境影響評価書(本件補正評価書)を同知事に送付した。なお、本件補正評価書は、本件承認申請の添付書類の一つである環境保全に関し講じる措置を記載した図書として用いられている。(甲12の1・2、乙2)」

(3) 原判決3頁24行目の「沖縄防衛局長」を「沖縄防衛局」に、16頁24行目及び25行目並びに17頁2行目、11行目、16行目、17行目及び22行目の各「原告」をいずれも「一審分離前原告」に、同11行目及び18行目の各「本件」をいずれも「原審」にそれぞれ改める。

(4) 原判決18頁3行目から4行目にかけて、9行目及び10行目の各「原告」をいずれも「一審分離前原告」に、同15行目の「第13回」を「原審第13回」に、同16行目の「終結した」を「終結し、令和4年4月26日、控訴人らの原告適格を否定して本件訴えをいずれも却下する旨の判決をした」にそれぞれ改める。

(5) 原判決19頁11行目の「施設庁」の次に「(当時)」を加える。

(6) 原判決195頁8行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。

「2 公有水面埋立法施行令(ただし、関係部分を抜粋したもの)

第4条 都道府県知事ハ公有水面埋立法第3条第2項ノ規定又ハ同項ノ

規定ノ準用ニ依ル通知ヲ受ケタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ関係住民ニ周知セシムルコトニ努ムベシ

第30条 本令ハ国ニ於テ埋立ヲ為ス場合ニ公有水面埋立法第42条第

3項ノ規定ニ依ル準用ノ範囲内ニ於テ之ヲ準用ス」

(7) 原判決195頁9行目の「2」を「3」に、同行目の「3条及び5条」を「(ただし、関係部分を抜粋したもの)」にそれぞれ改め、196頁4行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。

「 (準用規定)

第16条 第1条から第7条まで(第3条第2号及び第3号を除く。)及び第15条の規定は、国において行う埋立てについて準用する。この場合において、第7条及び別記様式第三中「許可」とあり、別記様式第一及び別記様式第三中「免許」とあるのは、「承認」と読み替えるものとする。

2  (略)」

(8) 原判決196頁5行目の「3」を「4」に、198頁2行目の「4」を「5」に、209頁24行目の「5」を「6」に、212頁4行目(同頁記載の行番号による。)の「6」を「7」に、215頁1行目の「7」を「8」に、220頁5行目の「8」を「9」に、同15行目(同頁記載の行番号による。)の「9」を「10」に、222頁12行目の「10」を「11」に、同20行目の「11」を「12」に、223頁8行目の「12」を「13」に、224頁23行目の「13」を「14」に、225頁7行目の「14」を「15」にそれぞれ改め、同17行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。

「16 航空法(ただし、関係部分を抜粋したもの)

(この法律の目的)

第1条 この法律は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して、航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定め、並びに航空機を運航して営む事業の適正かつ合理的な運営を確保して輸送の安全を確保するとともにその利用者の利便の増進を図ること等により、航空の発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。(令和4年法律第62号による改正前のもの)

(定義)

第2条 (略)

2~7  (略)

8 この法律において「進入表面」とは、着陸帯の短辺に接続し、且つ、水平面に対し上方へ50分の1以上で国土交通省令で定める勾配を有する平面であつて、その投影面が進入区域と一致するものをいう。

9 この法律において「水平表面」とは、空港等の標点の垂直上方45メートルの点を含む水平面のうち、この点を中心として4000メートル以下で国土交通省令で定める長さの半径で描いた円周で囲まれた部分をいう。

10 この法律において「転移表面」とは、進入表面の斜辺を含む平面及び着陸帯の長辺を含む平面であつて、着陸帯の中心線を含む鉛直面に直角な鉛直面との交線の水平面に対する勾配が進入表面又は着陸帯の外側上方へ7分の1(ヘリポートにあつては、4分の1以上で国土交通省令で定める勾配)であるもののうち、進入表面の斜辺を含むものと当該斜辺に接する着陸帯の長辺を含むものとの交線、これらの平面と水平表面を含む平面との交線及び進入表面の斜辺又は着陸帯の長辺により囲まれる部分をいう。

11~22 (略)

(物件の制限等)

第49条 何人も、空港について第40条(第43条第2項において準用する場合を含む。)の告示があつた後においては、その告示で示された進入表面、転移表面又は水平表面(これらの投影面が一致する部分については、これらのうち最も低い表面とする。)の上に出る高さの建造物(その告示の際現に建造中である建造物の当該建造工事に係る部分を除く。)、植物その他の物件を設置し、植栽し、又は留置してはならない。ただし、仮設物その他の国土交通省令で定める物件(進入表面又は転移表面に係るものを除く。)で空港の設置者の承認を受けて設置し又は留置するもの及び供用開始の予定期日前に除去される物件については、この限りでない。」

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所は、原審と異なり、控訴人らの本件訴えはいずれも適法であると判

断する。その理由は、次のとおりである。

2(1) 行訴法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項、最高裁平成16年(ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁)

(最高裁平成17年判決)参照)。

 そして、このことは、同条1項にいう裁決の取消しの訴えの原告適格(当該裁決の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」)についても同様であると解されるところ、本件のように、当初の処分後に生じた事情により当該処分を撤回した処分(撤回処分)につき審査請求がされた結果、これを認容して当該撤回処分を取り消す旨の裁決がさ れた場合、当該裁決は、撤回処分によって将来に向かって消滅した当初の処分と同等の 効果を有するものであるから、当該裁決の取消訴訟における原告適格については、当初 の処分の取消訴訟における原告適格と同様の判断枠組みに従って行うべきものと解する のが相当である。

(2) 上記の見地に立って、まず、控訴人2番、3番及び16番が本件裁決の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。

 ア(ア) 公有水面埋立法は、42条1項において、国が行う埋立てにつき、当該事業を施行する官庁が都道府県知事から承認を受けるべきことを定め、その承認の要件が同条3項において準用する同法4条1項により定められているところ、同項は、その要件として、「国土利用上適正且合理的ナルコト」(1号)、「其ノ埋立ガ環境保全及災害防止に付十分配慮セラレタルモノナルコト」(2号)、「埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト」(3号)及び「埋立地ノ用途ニ照シ公共施設ノ配置及規模ガ適正ナルコト」(4号)などを定めている。

これらの要件のうち、公有水面埋立法4条1項1号の要件(1号要件)は、埋立ての承認又は免許(以下「承認等」という。)の対象とされた公有水面の埋立てや埋立地の用途が国土利用上の観点から適正かつ合理的なものであることを、同項2号の要件(2号要件)は、公有水面の埋立て自体により生じ得る環境保全及び災害防止上の問題を的確に把握するとともに、これに対する措置が適正に講じられていることを、同項3号の要件(3号要件)は、埋立地の用途(ひいてはその用途から翻って見た埋立て自体)につき埋立地周辺等においての土地利用上での整合性を図る観点から、埋立地の用途(使用形態の区別)が環境保全に関する計画(環境基本法に基づく環境基本計画や公害防止計画、騒音規制法の規制基準等)等に違背しないことを、同項4号の要件は、埋立地の適正な利用を確保する観点から、埋立地の用途に照らして公共施設の配置及び規模が適正であることを、それぞれ承認等の要件とするものであると解される。そして、これらの規定のうち同項4号を受けて、公有水面埋立法施行規則は、公共施設の配置及び規模に関する技術的細目として、埋立地の規模、用途、区画割及び周辺の状況を勘案して、環境の保全上又は災害の防止上適切な配置及び規模で設計されていることなどを定めている(同規則16条において準用する同規則5条。なお、同条は、道路、公園等の公共施設について規定しているが、それ以外の公共施設をその対象から排除したものと解すべき合理的な理由は見当たらないから、上記道路、公園等以外の公共施設についても同様に、環境の保全上又は災害の防止上適切な配置及び規模で設計されていることを求める趣旨と解される(甲139参照)。)。

このような公有水面埋立法及び同規則の定めの内容に照らすと、同法においては、承認等の要件に関し、公有水面の埋立て及び埋立地の用途が上記の技術的な基準に適合していることにつき、国土利用上の観点のみならず、環境保全及び災害防止上の観点からもその審査を要するものとされているものと解される。

加えて、公有水面埋立法は、承認等の申請に際しては、「埋立区域及埋立ニ関スル工事ノ施行区域ヲ表示シタル図面」や「設計ノ概要ヲ表示シタル図書」等のほか、国土交通省令をもって定める図書を添付すべきものとし(同法42条3項において準用する同法2条3項5号)、これを受けて、公有水面埋立法施行規則は、上記図書の一つとして、環境保全に関し講じる措置を記載した図書(埋立て及び埋立地の用途に関する環境影響評価に関する資料を含む環境保全措置を記載した図書(甲139参照))を掲げている(同規則16条において準用する同規則3条8号)。また、同法は、都道府県知事において遅滞なくその事件の要領を告示するとともに、出願書類と関係図書(上記環境保全に関し講じる措置を記載した図書を含む(甲139参照)。)を公衆の縦覧に供し、かつ、期限を定めて地元市町村長の意見を徴すべき旨(同法3条1項)や、上記告示をしたときは遅滞なくその旨を関係都道府県知事に通知すべき旨(同条2項)に加え、埋立てに関し利害関係を有する者が上記縦覧の期間満了日まで都道府県知事に意見書を提出することができる旨(同条3項)や、地元市町村長が上記意見を述べようとするときは議会の議決を経ることを要する旨(同条4項)を定め、これを受けて、公有水面埋立法施行令は、同条2項の通知に関し、当該通知を受けた関係都道府県知事において関係住民への周知に努めるべき旨を定めている(同令30条において準用する同令4条)。

(イ)  次に、公有水面埋立法と目的を共通にする関係法令についてみるに、環境影響評価法は、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とし(1条)、本件埋立事業のように一定規模以上の公有水面埋立法による公有水面の埋立て等については、環境影響評価法に基づく環境影響評価の実施及び環境影響評価書の作成を義務付けるとともに(同法2条2項   1号卜、3項、12条1項、21条2項、環境影響評価法施行令1条、6条、別表第1の7の項)、公有水面の埋立てに係る承認等については、その環境の保全に関する審査(特に2号要件・3号要件の審査)に際し、上記環境影響評価書の記載事項等に基づいて、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるか否かの審査を行うものと定め(同法33条3項)、事業者は、上記環境影響評価書に記載されているところにより、環境の保全についての適正な配慮をして当該対象事業を実施するようにしなければならないものと定めている(同法38条1項)。また、同法は、地方公共団体が同法所定の対象事業以外の事業等に係る環境影響評価その他の手続に関する事項等に関し条例で必要な規定を定めることを妨げない旨規定しており(61条1項)、これを受けて、沖縄県においては、規模が大きく、環境影   響の程度が著しいものとなるおそれがある事業を対象とする沖縄県環境影響評価条例が制定されており、同条例は、沖縄県知事が同法所定の対象事業以外の事業について行う許認可等の審査に際し、当該事業に係る環境影響評価書の内容について配慮するものとし(同条例2条2項、31条)、事業者につき同法38条1項と同内容の配慮義務を定め(同条例33条)、飛行場及びその施設の設置の事業や一定の規模以上の公有水面の埋立ての事業等をその適用対象として定めている(同条例2条2項、別表の5・6の項、同条例施行規則3条、別表第1の5・6の項)。

環境基本法は、環境影響評価法の制定の根拠として環境影響評価の推進に係る国の責務を定めた環境の保全に係る基本法であり、かつ、上記(ア)の3号要件に係る「環境保全に関する計画」に当たる環境基本計画や公害防止計画の根拠となる法令でもあるところ、環境基本法は、環境の保全に関する施策を推進すること等をもって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること等を目的とし(1条)、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下等によって人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることを公害と定義した上で(2条3項)、国及び地方公共団体は、環境の保全に関する施策等を策定し、実施する責務を有する者とし(6条、7条)、国は、土壌の汚染、騒音又は振動の発生その他の行為に関し、事業者等の遵守すべき基準を定めること等により公害を防止するために必要な規制の措置を講じなければならないこと(21条1項1号)等を定めている。また、沖縄県においては、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに県、事業者及び県民の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって現在及び将来にわたって県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的として、沖縄県環境基本条例が制定されており(1条)、同条例は、環境基本法所定の公害と同内容の被害が生ずることを公害と定義した上で(2条3項)、沖縄県が同法21条1項1号所定の措置と同内容の措置を講じなければならないこと(17条1項1号)等を定めている(なお、同条例は、沖縄県環境影響評価条例の制定根拠ともなっている(同条例1条参照)。)。

そうすると、以上の環境影響評価法、環境基本法等の各規定は、公有水面の埋立てに係る承認等に際し、環境影響評価等の手続を通じて公害の防止等に適正な配慮が図られるようにすることも、その趣旨及び目的とするものということができる(なお、これらの規定については、その法令の改正の前後を通じて、その実質に差異はない。)。

(ウ)  前記(ア)の公有水面埋立法及び同法施行令・規則に加えて上記(イ)の環境影響評価法、   環境基本法等の趣旨及び目的をも参酌すれば、承認等に関する公有水面埋立法の規定は、公有水面の埋立て及び埋立地の用途(施設の設置等)に係る事業(以下「公有水面埋立事業」ともいう。)に伴う騒音、振動等によって当該事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し、もって健康で文化的な生活を確保し、良好な生活環境を保全することを、その趣旨及び目的とするものと解される。

イ  次に、本件裁決において考慮されるべき利益の内容及び性質についてみるに、違法な 公有水面埋立事業に起因する騒音、振動等によって当該事業に係る事業地の周辺住民が 直接的に受ける被害の程度は、その居住地と当該事業地との近接の度合いによっては、上記の被害を反復、継続して受けることにより、その健康や生活環境に係る著しい被害を受ける事態にも至りかねないものである。

ウ しかるところ、前記アの公有水面埋立法の趣旨及び目的並びに上記イの考慮されるべき利益の内容及び性質に鑑みれば、同法は、事業地の周辺地域に居住する住民に対し、そのような公有水面埋立事業に起因する騒音、振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解されるのであり、このような被害の内容、性質、程度等に照らせば、前記の具体的利益は、一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものである。

以上を踏まえると、公有水面埋立法は、騒音、振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して、そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当であり、公有水面埋立事業の事業地周辺に居住する住民のうち、当該事業が実施されることにより上記の著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、当該事業に係る公有水面の埋立ての承認等(前記(1)のとおり、これを撤回した処分を取り消す旨の裁決を含む。)の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。

エ そして、公有水面埋立事業の事業地の周辺に居住する住民が、当該事業に起因する騒音、振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるか否かは、当該住民の居住する地域が上記の著しい被害を直接的に受けるものとして想定される地域であるか否かによって判断すべきものと解される。また、当該住民の居住する地域がそのような地域であるか否かについては、当該事業に係る埋立ての対象となる公有水面やその用途として建設される施設の種類や規模等の具体的な諸条件を考慮に入れた上で、当該住民の居住する地域と当該事業地との距離関係を中心として、社会通念に照らし、合理的に判断すべきである。

オ そこで本件につき検討すると、前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、(ア)本件事業は、本件埋立海域に米軍の使用する普天間飛行場の代替施設(本件施設)を設置するために約160haの公有水面を埋め立てるというものであり、これにより、V字型に配置された幅30m、長さ1800m(オーバーラン長を含む。)の滑走路2本を中核とする飛行場が設置されること(原判決第2の2(1)ア)、(イ)本件承認願書の添付書類として用いられた本件環境影響評価に係る補正評価書(本件補正評価書)においては、①航空機騒音の予測地域につき「名護市辺野古沿岸域周辺の地域一帯」と定められ、具体的な予測地点として辺野古集落を含めたより広範な範囲が選定され(甲12の2、乙2の3〔6-3-62頁〕)、②国又は地方公共団体による環境保全の基準又は目標のうち航空機騒音に係る基準又は目標につき、公害対策基本法9条ないし環境基本法16条1項に基づいて策定された「航空機騒音に係る環境基準」(昭和48年環境庁告示第154号。ただし、平成19年環境省告示第114号による改正前のもの)所定の基準値である70WECPNL(生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持することが望ましい航空機騒音に係る基準のうち、専ら住居の用に供される地域に適用されるもの)が採用され(甲12の2、2の3〔6-3-94頁〕、乙69~72)③本件施設の供用後における航空機の運航に伴い発生する航空機騒音の予測結果として、米国側からの提供データや普天間飛行場における騒音調査の結果等に基づいて予測した飛行経路や飛行回数を基に、飛行経路のばらつきによる影響も考慮した上で、本件WECPNL予測コンター図(原判決別紙5記載の本件補正評価書の図-6.3.2.2.16)が作成されたこと(甲12の2、乙2の3〔6-3-65~77・82・83頁〕)、(ウ)沖縄防衛局は、平成22年1月以降、普天間飛行場における回転翼機等の飛行状況調査(航跡調査)を実施しており、上記(イ)3のばらつきによる影響の考慮に当たって当該調査による実績値を基にしたほか、少なくとも平成29年度以降の航跡調査において、技術的な限界から、実際の航空機の飛行と調査結果の航跡とは最大で約200m又はそれ以上の誤差が生ずる可能性があるとされていること(甲12の2、甲165、170、乙2の3〔6-3-71頁〕)が認められる。

 このような本件埋立事業に係る埋立ての対象となる公有水面やその用途として建設される本件施設の種類や規模等に加え、本件承認申請の添付書類として提出され審査の対象となる本件環境影響評価に係る本件補正評価書において採用された航空機騒音に係る環境保 全の基準の内容(上記(イ)②の環境基準所定の基準値である70WECPNLの採用等)や本件WECPNL予測コンター図の性質等(普天間飛行場における調査結果等に基づく予測値であることや、同飛行場における航跡調査において最大で約200m又はそれ以上の誤差が生ずる可 能性が指摘されていること等)を考慮すると、本件WECPNL予測コンター図に表示された70WECPNLのコンター線からおおむね200m以内の地域に居住している者については、本件 埋立事業に起因する騒音、振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるものとして想定される地域に居住する者ということができ、上記の著しい被害を直接 的に受けるおそれのある者に当たるというべきである。

 そして、控訴人2番、3番及び16番については、上記コンター線からそれぞれ1 87.2m、 90.1m及び194.0m離れた地点に居住している者と認められ(乙89)、本件埋立事業に係る埋立 てや埋立地の用途に起因する騒音、振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害を直 接的に受けるおそれのある者に当たると認められるから、それぞれが提起した本件裁決の 取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。

(3)次に、前記(1)の見地に立って、控訴人9番が本件裁決の取消しを求める原

告適格を有するか否かについて検討する。

ア(ア) 公有水面埋立法及び同法施行令・規則に加えて、環境影響評価法、環境基本法等の趣旨及び目的をも参酌すれば、承認等に関する公有水面埋立法の規定は、公有水面の埋立て及び埋立地の用途(施設の設置等)に係る事業(公有水面埋立事業)に伴う騒音、振動等によって、当該事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し、もって健康で文化的な生活を確保し、良好な生活環境を保全することも、その趣旨及び目的とするものと解されることは、前記(2)アで判示したとおりであるところ、同法における承認等の要件のうち、1号要件の審査に当たっては、埋立ての目的及び埋立地の用途に係る必要性及び公共性の有無や程度に加え、埋立てを実施することにより得られる国土利用上の効用、埋立てを実施することにより失われる国土利用上の効用等の諸般の事情を総合的に考慮することが不可欠であるとされており、本件埋立事業については、これが普天間飛行場の代替施設及びその関連施設(本件施設等)を設置するために実施されるものであることを踏まえ、仲井眞元知事において、普天間飛行場の周辺に学校や住宅、医療施設等が密集しており、騒音被害等により住民生活に深刻な影響が生じていることや、過去に同飛行場周辺で航空機の墜落事故が発生しており、同飛行場の危険性の除去が喫緊の課題であることを前提に、①本件施設等の面積や埋立面積が同飛行場の施設面積と比較して相当程度縮小されること、②沿岸域を埋め立てて滑走路延長線上を海域とすることにより航空機が住宅地の上空を飛行することが回避されること等に照らし、埋立ての規模及び位置が適正かつ合理的であるなどとして、本件埋立事業が1号要件に適合するとの判断がされていること(最高裁平成28年(行ヒ)第394号同年12月20日第二小法廷判決・民集70巻9号2281頁(最高裁平成28年判決)(乙7)参照)に鑑みれば、本件においては、上記の公有水面埋立事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民に発生し得る健康又は生活環境の    被害として防止すべきものとしては、航空機の墜落事故に伴う飛行場の危険性も想定されているものと解される。このような見地に加え、航空機の航行に関する法律である航空法については、飛行場周辺に居住する個々人の個別的利益を保護する趣旨を含むものと解されていること(最高裁平成元年判決(甲166)参照)を併せて考慮すると、本件においては、航空法についても、公有水面埋立法と目的を共通にする関係法令としてその趣旨及び目的を参酌すべきものと解するのが相当である。

(イ) そして、航空法は、航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定めること等により、公共の福祉を増進することを目的とし(1条)、国土交通大臣による設置の許可を受けた空港について告示された制限表面(2条8項ないし10項所定の進入表面、水平表面及び転移表面をいう。以下同じ。)の上に出る高さの建造物等の物件の設置を禁じ(49条1項)、当該告示の際に現存する物件で上記高さの制限に抵触するものの所有者等に対し、通常生ずべき損失を補償して当該抵触部分の除去を求めることができる(同条3項)などと定めており(なお、航空法49条は、自衛隊の設置する飛行場についても準用される(自衛隊法107条2項)。)、これらの規定からすれば、同法は、上記「航空機の航行に起因する障害」の一内容として、航空機が一定の高さの建造物等の物件に衝突すること等によって生じる被害を想定し、その防止を図ることを目的としているものと解される(なお、これらの規定については、その法令の改正の前後を通じて、その実質に差異はない。)。

(ウ) そうすると、前記(ア)において説示したところに加え、上記(イ)においてみた航空法の趣旨及び目的をも参酌すれば、本件においては、承認等に関する公有水面埋立法の規定は、公有水面の埋立て及び埋立地の用途(施設の設置等)に係る事業(公有水面埋立事業)に伴う騒音、振動等(航空機の衝突や墜落事故といった航空機の航行に起因する障害を含む。)によって、当該事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し、もって健康で文化的な生活を確保し、良好な生活環境を保全することも、その趣旨及び目的とするものと解するのが相当である。

 イ  次に、本件裁決において考慮されるべき利益の内容及び性質についてみるに、違法な公有水面埋立事業に伴う航空機の航行に起因する障害による被害を直接的に受けるのは、事業地の周辺の一定範囲の地域に居住する住民に限られるところ、前記アのとおり、本件においては、航空機の航行に起因する障害の中には航空機の衝突や墜落事 故に伴うものが想定されることからすれば、その被害は、健康(ひいては生命、身体の安全)や生活環境に係る著しい被害にも至りかねないものである。

 ウ  しかるところ、前記アの公有水面埋立法の趣旨及び目的並びに上記イの考慮されるべき利益の内容及び性質に鑑みれば、同法は、事業地の周辺地域に居住する住民に対し、そのような公有水面埋立事業に伴う航空機の航行に起因する障害によって健康(ひいては生命、身体の安全)又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解されるのであり、このような被害の内容、性質、程度等に照らせば、この具体的利益は、一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわざるを得ない。

   以上を踏まえると、公有水面埋立法は、航空機の航行に起因する障害によって健康 (ひいては生命、身体の安全)又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある本件埋立事業の事業地の周辺地域に居住する個々の住民に対して、そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当であり、公有水面埋立事業の事業地周辺に居住する住民のうち、当該事業が実施されることにより上記の著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、当該事業に係る公有水面の埋立ての承認等(前記(1)のとおり、これを撤回した処分を取り消す旨の裁決を含む。)の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。

 エ  そして、公有水面埋立事業の事業地の周辺に居住する住民が、当該事業に伴う航空機の航行に起因する障害により健康(ひいては生命、身体の安全)又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるか否かは、当該住民の居住する地域が上記の著しい被害を直接的に受けるものとして想定される地域であるか否かによって判断すべきものと解される。また、当該住民の居住する地域がそのような地域であるか否かについては、当該事業に係る埋立地の用途として建設される飛行場の種類や規模、当該飛行場に係る各種規制の内容等の具体的な諸条件を考慮に入れた上で、当該住民の居住する地域と当該事業地との距離関係や当該規制の適用範囲を中心として、社会通念に照らし、合理的に判断すべきである。オそこで本件につき検討すると、前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、(ア)本件事業により、V字型に配置された幅30m、長さ1800m(オーバーラン長を含む。)の滑走路2本を中核とする、米軍の使用する普天間飛行場の代替施設(本件施設)が設置されること(原判決第2の2(1)ア)、(イ)本件施設を含め、米軍が運用する飛行場については、米軍が定めている飛行場及びヘリポートに係る計画及び設計についての基準として米国国防総省が作成  している統一施設基準が適用されるところ、統一施設基準においては、航空機の安全な航行を目的として、飛行場の周辺空間に進入表面、水平表面等の高さ制限(周辺高さ制限)を設定しており、その内容は、滑走路のセンターラインの両方の終端から垂直方向45.72mの高さの点を中心に、地表に平行にそれぞれ2286m半径の円弧を描き、更にその外側(内側水平面の外縁から外側上方)2133.6mの範囲において、20:1の勾配を有する円錐面(45.72m~152.4mの高さを有するもの。具体的には、45.72m+滑走路の標高+内側水平面の外縁からの距離×1/20という数式によって算出される高さの面)を描き、上記の円弧及び円錐面より上に構造物が出ることがないようにすることを求めるもので  あること(原判決第2の3(3)甲66、67)、(ウ)本件埋立事業の事業地の所在する地域では、本件埋立事業に伴い、統一施設基準に基づく周辺高さ制限が設定されることが予定されており、建築基準法令や名護市景観まちづくり条例に反しない限り、統一施設基準に抵触する高さの個人住宅等であってもその建設は法的には制限されないとされているが、その一方で、沖縄防衛局においては、統一施設基準の制限区域内の建物につき、改築・増築等により更に高さを上げる計画が生じた際には相談するよう求めていること(甲190)、(エ)統一施設基準と同様に航空機の航行の安全を図るための方法等を 定める航空法においては、制限表面のうち水平表面に係る垂直方向の高さを45m(同法2条9項)とするなど、統一施設基準よりも小さな基準値が採用されていること(原判決第2の3(3)前記ア(イ))が認められる。

   そうすると、このような本件埋立事業に係る埋立地の用途として建設される本件施設の種類や規模、本件施設に係る規制の内容等を考慮すると、統一施設基準における周辺高さ制限におおむね抵触する高さの建物に居住している者については、本件埋立事業に伴う航空機の航行に起因する障害により健康(ひいては生命、身体の安全)又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるものとして想定される地域に居住する者ということができ、上記の著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるというべきである。そして、控訴人9番については、本件施設の供用開始時に設定されることが見込まれる上記周辺高さ制限における円錐表面に係る制限高さを0.97m下回る高さの建物に居住している者と認められ(甲137、乙92の1・2、乙110、111、146の1・2)、本件埋立事業に伴う航空機の航行に起因する障害により健康(ひいては生命、身体の安全)又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たると認められるから、同人が提起した本件裁決の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。

(4)ア これに対し、被控訴人は、前記(1)の判断枠組みに関し、本件撤回処分が本件埋立承認とは全く別個の処分であることや行政不服審査制度の目的や裁決の機能等を指摘するなどして、本件裁決の審査対象となった本件撤回処分は、公有水面埋立法4条1項各号の要件を満たすとされた本件埋立承認がその後の事情によって1号要件及び2号要件を満たさない事態に至ったことを理由としてされたものであり、本件裁決における審理の対象も1号要件及び2号要件のみであるから、本件訴訟における原告適格は、本件裁決の根拠法規である同項1号及び2号との関係で検討されるべきであるとした上で、同項1号及び2号は埋立地の供用に起因する健康又は生活環境に係る著しい被害を受けない利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を含まない旨主張する。

   しかし、前記(1)で判示したとおり、行訴法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分又は裁決により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうところ、同条2項が「当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする」旨定め、当該処分又は裁決の「根拠となる法令の規定」に限らず、当該「法令」の趣旨及び目的を考慮するものとし、かつ、その考慮に当たって当該法令との間で「法令」単位での「目的」の共通性に着目して「関係法令」の趣旨及び目的をも参酌するものとするとともに、当該処分において考慮されるべき「利益」の内容及び性質を考慮するに当たっても、当該処分又は裁決がその根拠となる「法令に違反」してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質等を勘案するものとして、根拠となる法令の「規定」ではなく「法令」自体に着目した定めをしていることに照らせば、同条所定の原告適格の有無は、上記のとおり、関係法令の趣旨及び目的をも参酌した上告適格の有無は、上記のとおりでの根拠法令の趣旨及び目的を考慮して導かれる権利若しくは法律上保護された利益の侵害又はそのおそれの有無という観点から判断されるべきものであると解される。そして、このような権利利益の侵害又はそのおそれの有無は当該処分又は裁決の「要件」ではなく「効果」に関わるものであるから、その判断は、具体的な事案において当該処分又は裁決の理由とされた要件の規定如何によって左右されるものとは解し難い。そうすると、本件裁決の審査対象となった本件撤回処分が、本件埋立承認につき事後的に1号要件及び2号要件を満たさない事態に至ったことを理由としてされたものであることを踏まえても、本件裁決の取消訴訟における原告適格につき、被控訴人の主張する判断枠組みを採用することはできず、また、当該判断枠組みを前提とする被控訴人の主張はいずれも採用の限りでない。

イ   被控訴人は、前記(2)に関し、本件WECPNL予測コンター図の予測が信頼できるものであることや、環境整備法及び航空機騒音障害防止法において定められた第一種区域 (音響又は音響に起因する障害が著しいとされている区域)の基準(ただし、当該基準をWECPNLから変更する旨の改正前のもの)が75WECPNLであること、米軍の運用する航空機が生じさせる騒音に起因する健康又は生活環境に係る被害の賠償を求める従前の累次の訴訟において裁判所が一貫して75WECPNL未満の地域に居住している者の被害につき受忍限度を超えるものとは認められないとの認定をしていることなどを指摘した上で、75WECPNL以上の航空機騒音が生ずるおそれがある区域に居住するか否かを原告適格の有無の判断基準とすることには合理性があり、上記コンター図の7 5WECPNLのコンター線からそれぞれ587.2m、445.3m及び552.3m離れた地点に居住している控訴人2番、3番及び16番について原告適格を認めることは相当でない旨主張する。

  しかし、被控訴人の指摘する環境整備法や航空機騒音障害防止法所定の第一種区域の基準(75WECPNL)を踏まえても、前記(2)で判示したとおり、本件承認申請の添付書類として提出され審査の対象となる本件環境影響評価に係る本件補正評価書において公害対  策基本法9条ないし環境基本法16条1項に基づいて策定された「航空機騒音に係る環境基  準」所定の基準値(70WECPNL)が採用されていること等の本件の事実関係の下では、本件WECPNL予測コンター図に表示された70WECPNLのコンター線を基準に原告適格の範囲を判断するのが相当であるから、これと異なる被控訴人の主張は採用し難い。この点に関し、被控訴人は、最高裁平成元年判決等を指摘するなどして、受忍限度を超える被害に当たるか否かの判断基準である75WECPNLを原告適格の有無の判断基準”とすることの合理性を主張するが、上記判決は、そもそも行訴法9条2項の新設等を内容とする同法の平成16年改正前のものである上、この点をひとまず措くとしても、騒音障害に対する補償等に関する判断基準をもって原告適格の有無を判断すべきものと判示したものでもない(被控訴人の指摘する上記判決の解説(甲167)も飽くまで上記判断基準が「目安」としても十分機能し得ることを指摘するにとどまる。)から、被控訴人の指摘は、いずれも本件の事実関係の下での上記判断を左右するものとはいえない(特に、前記(2)オで判示したとおり、本件補正評価書における航空機騒音に係る環境保全の基準の選定内容 (70WECPNLの基準値の採用)は、前記(2)ウの著しい被害を直接的に受ける「おそれ」の存在を基礎付ける重要な考慮要素となると解するのが相当であり(これと同様に、申請時の添付書類として提出が義務付けられている環境影響調査報告書における調査対象地域の選定内容を考慮したものとして、最高裁平成24年(行ヒ)第267号同26年7月29日第三小法廷判決・民集68巻6号620頁参照)、他に被控訴人の指摘する判例ないし裁判例は、いずれも本件と事案を異にするものといわざるを得ず、結論を左右しない。)。

そして、本件補正評価書において採用された航空機騒音に係る環境保全の基準の内容や本件WECPNL予測コンター図の性質等を考慮すると、同コンター図に表示された70WECPNLのコンター線からおおむね200m以内の地域に居住している者については本件裁決の取消訴訟における原告適格を有するものと認めるのが相当であることは、前記(2)オのとおりであり、控訴人2番、3番及び16番が同コンター線の外側に居住していることをもって直ちにその原告適格を否定すべきものということはできないから、これに反する被控訴人の主張は採用できない(なお、以上の判断は、本件WECPNL予測コンター図を前提とするものであるから、その信頼性に関する被控訴人の主張は上記結論を左右しない。)。

ウ 被控訴人は、前記(3)に関し、米軍内の内部規則であり、本邦の法令ではない統一施設基準が行訴法9条2項にいう「目的を共通にする関係法令」に当たらないことは明白であり、統一施設基準における周辺高さ制限を理由として原告適格の有無を決する根拠がない上、控訴人9番の住所地に存する建築物の高さは周辺高さ制限に抵触していないし、その建物高自体は4.70mしかなく、このような平家建ての建築物に抵触するか否かといった態様で航空機が運航されることはあり得ないなどと指摘して、控訴人9番について航空機の事故による被害のおそれはなく、本件裁決の取消訴訟における原告適格を有しない旨主張する。

 しかし、統一施設基準自体が行訴法9条2項にいう関係法令に当たらないとしても、公有水面埋立法(本件埋立事業に係る1号要件適合性の判断において事業地の周辺地域における航空機の墜落事故に伴う飛行場の危険性が考慮されていることを含む。)及び同法施行令・規則に加えて環境影響評価法、環境基本法、航空法等の趣旨及び目的をも参酌すれば、承認等に関する公有水面埋立法の規定は、公有水面埋立事業に伴う航空機の航行に起因する障害によって、当該事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民に健康(ひいては生命、身体の安全)又は生活環境の被害が発生することを防止し、もって健康で文化的な生活を確保し、良好な生活環境を保全することも、その趣旨及び目的とするものと解するのが相当であることは、前記(3)アないしウで判示したとおりであって、このことを前提に「当該処分 又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及 び性質並びにこれが害される態様及び程度」行訴法9条2項参照)に関し、本件施設に適用さ れることが見込まれる統一施設基準の内容を勘案して原告適格の有無を判断することは、同項の趣旨に反するものとは解されない。そして、本件施設の種類や規模、本件施設に係る規制の内容等(なお、前記のとおり、統一施設基準と同様に航空機の航行の安全を図るための方法等を定める航空法においては、水平表面に係る垂直方向の高さ等につき統一施設基準よりも小さな基準値が採用されている。)を考慮すると、統一施設基準における周辺高さ制限におおむね抵触する高さの建物に居住している者については本件裁決の取消訴訟における原告適格を有するものと認めるのが相当であることは前記(3)オで判示したとおりであり、現状において控訴人9番の居住する建物が上記周辺高さ制限に抵触しないこと等の被控訴人指摘の事情をもって直ちにその原告適格を否定すべきものということはできないから、これに反する被控訴人の主張は採用できない(なお、被控訴人は、統一施設基準による制限には飛行場の安全性・危険性に係る考慮を踏まえ、適用が免除される場合があることが明示されていることを指摘するが、既に説示したところに加え、本件全証拠によっても、控訴人9番の居住する建物についてその適用が免除されるか否かは不明というほかないことなどに照らすと、上記指摘も結論を左右するものとはいえない。)。

エ 他に被控訴人が主張するところも上記結論を左右するものとはいえない。

(5) 以上によれば、控訴人らの主張するその余の観点から原告適格の有無について検討するまでもなく、控訴人らは、本件裁決の取消訴訟における原告適格を有するものということができる。

3 結論

  そうすると、控訴人らの本件訴えはいずれも適法であり、これを不適法として却下した原判決は取消しを免れないところ、本件訴訟の経過とその内容等に照らすと、本件については、原告適格に係る上記判断内容を踏まえて原審において更に弁論をする必要があると認められるので、原判決を取り消し、本件を那覇地方裁判所に差し戻すこととして(行訴法7条、民訴法307条)、主文のとおり判決する。

福岡高等裁判所那覇支部民事部

裁判長裁判官   三浦隆志

裁判官      吉賀朝哉

裁判官下和弘は、転補につき、署名押印することができない。

裁判長裁判官      三浦隆志