全国的な行財政改革の中で那覇市も2002年から保育所の民営化を進め、19カ所から7カ所にまで公立を減らした。同時に、市立保育所を地域の拠点保育所と位置付け「質的保育の拡充」「地域子育て支援の推進」など役割を特化させた。現在6保育所が拠点として、民間では難しい障がい児保育や一時保育を担うほか、子育て支援センターを備えて保育園に通っていない子どもを含めた地域の子育てを支援する。
多くの民営化を進めてきた市こどもみらい課の上原尚美副参事は「民間は力の差が大きい。公立を基本にして、修正してもらうことも多い」と述べ、基準としての役割を指摘する。指導内容は開園日や避難訓練、アレルギー対応など運営の基本的な点であることも多い。市立保育所の現場に法人の保育士を招く研修のほか、認可外園に公立の保育士が出向くこともあるという。
さらに公立は困難を抱えた親子への対応を重視。親の疾病や虐待、障がい児など、特別な配慮が必要な親子は、受け入れをためらう法人が少なくないという。「最後の受け皿として、公立には法人の倍くらいの障がい児がいる。各地域に公立は必要だ」と上原副参事は指摘する。
50年の歴史がある公立の久場川保育所では、障がいがあり活発に走り回る園児を1人の保育士が付きっきりで追い掛けていた。人員配置は法人と同じで余裕があるわけではない。それでも「地域の保健師や福祉施設と連携して家族支援をできるのも、公立だからこそ」と大城美佐子所長は言う。
ただ、法人には支払われる国からの補助金が公立には適用されないなど予算の制約もある。休日保育や夜間保育は法人だけが実施しているなど、公立が全ての取り組みで先行しているわけではない。大城所長は「この子たちが沖縄の将来を担う。民間も頑張っている。公立にしかできないことを現場も考えなければ」と話した。