参院選沖縄選挙区での伊波洋一氏の初当選は、翁長雄志知事を支える「オール沖縄」を旗印に県政与党などが手厚い支援態勢を敷いたことに加え、自民現職の島尻安伊子氏が米軍普天間飛行場の県外移設を求める公約を覆したことに対する県民の反発が大きかったことが最大の要因だ。島尻氏と安倍政権に対する批判票の受け皿として伊波氏に票が集まった。
伊波氏は社民、共産、社大、生活の4党と県議会会派のおきなわ、那覇市議会会派の新風会、金秀グループ、かりゆしと組織協定を結び、労組や民進党県連の支援も受けた。翁長知事が誕生した県知事選のような一枚岩の選挙態勢を築いたことが功を奏した。
6月の県議選で27議席を獲得した県政与党の県議らとセット戦術を施し、全県で約30の支部を開設。県議選の勢いを保ったまま県議らが持つ支持基盤を強固にした。序盤は各支部で動きにばらつきがあったが、現職大臣との戦いを意識し危機感を持って取り組んだことで市町村議や市民グループも積極的に参加。終盤は全県で豊富な運動量を見せた。大票田の那覇だけでなく、他地域でも革新票を手堅くまとめ南部の保守地盤の切り崩しにも成功した。
13年前の宜野湾市長時代から一貫して主張してきた米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去を公約に掲げ、「ぶれない政治」を前面に訴えたことも、無党派層の判断材料の一つになった。
一方、島尻氏は、普天間に関する公約撤回だけでなく、名護市辺野古移設に反対する市民らの抗議行動について「違法な妨害活動を阻止しなければならない。発生したら対処では遅い」(14年2月)と事前拘禁を認めるかのような発言などで物議を醸してきた。昨年10月に大臣に就任し、閣僚として辺野古移設を進める立場になったことで、より反発が増したとみられる。
選挙戦では菅義偉官房長官や山本一太元沖縄担当相らが沖縄入りしたが、効果は一定程度にとどまった。米軍属女性暴行殺人事件など一向に減らない米軍関係事件・事故に対し、基地を容認する自民への批判も影響した。公明の比例候補者とのセット戦術、おおさか維新の会県総支部などの支援も奏功しなかった。
保守系首長の支援を受けた南部の保守地盤でも島尻氏は苦戦し、誤算も生じた。また中部のある総決起大会では思うように支持者が集まらなかった。大票田の那覇では企業回りや各地域、各応援団の集会を開いて勢いを見せたが、及ばなかった。